「なんでもホンモノ」教育
校長 小椋 つや子     

 今月は、ある学校の校長先生の学校だよりをご紹介して、「なんでもホンモノ」教育について考えてみたいと思います。
東京国立博物館の長谷川栄氏は、我が家の家訓は、

        
なんでもホンモノ
                   だといいます。
 なんでもホンモノといっても何のことかわからないと思います。しかし、次の文を読むとナルポドと納得してしまいます。


(前略〉
 息子が2人いるのが、すでに1歳と4歳の時から、ルーブルや大英博物館の床の上を歩かせ、ロンドン塔やバルセロナのガウディの彫刻を見せるべく1年間のヨーロッパ旅行を経験させている。小学生のときに、すでに軽自動車の運転を空き地で習わせ、中学生になって長男は大きなアメリカの中古車を見付けてクライスラー・ニューヨーカーをばらして電気系統を整え完全に整備している。塗装も、自分で、日焼けして真っ黒になって取り組んでいる姿は微笑ましく、完成後は、彼の志望して入学した高校の白動車科へ教材として寄贈している。1
 在学中も、難しいコルベットのエンジンの組み立てなどをやり遂げ、現在は本田技研の技術研究所で好きな自動車の研究に打ち込んで幸せそうである。
 ハイテクの好きな次男坊の方も、小さいときから与えるものはすべて大人と同じで、パソコンも楽器もカメラも一気にプロ級である。よちよち歩きの頃から経験した外国生活でことばの通じない国を知り、コミュニケーションの大切さを自覚しているようで、また登山の厳しい生存の条件は、生きることの原型を悟らせたようである。彼も、来春から外資系の薬学研究所へ入ることになっている。
 我が家の家訓は、それは「なんでもホンモノ」だが、この家訓は力強く知的探求を続ける好ましい2人の息子の成長を眺め、温かく放任することのできる幸せを与えてくれたようである。
 

 この文を読んだとき.私は、正直なところ、「ウーン」とうなってしまいました。「おそかったなあ」とも思いました。
 私にも2人の息子がいますが、ちょうどこの話と反対のことをしてきたからです。
 もっとも、金もなし、暇もなしでは到底このようなまねはできたはずもありませんが、せめて、登山とか水泳とかはできなかったものか。それも無理なら、せめて畑仕事をして共に収穫の喜びを味わうとか、近くでテントを張って原始生活のマネゴトをするとか、何か生の体験をさせたかったなあと思ってしまうのです。
 次男が、天体望遠鏡が欲しいと言った時も、中学生になってからとか言ってゴマカシてしまったことなども思い出されて、2人が成人してしまった今、シミジミ申し訳なかったなあと考えてしまうのです。

 以上の文章は、ある学校の校長先生の学校だよりです。私は、この学校だよりを読んだとき、この校長先生が東京国立博物館の長谷川氏の家訓「なんでもホンモノ」から学んだように、どの家庭にも、それぞれの家庭にあった力強く知的探求を続ける子どもの成長を願う「ホンモノ」教育があるのではないかと思い、いつか紹介しようと思っていました。
 これを読んで、家にもあるぞ我が家の「ホンモノ」教育と思われる方、是非ご紹介ください。

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