地球の生命や文明の基盤を守ることにつながる学び
                         校長 小椋 つや子
   昨年3年生の教室を通りかかったところ、採集した「ナガサキアゲハ」について発表している子どもがいました。ナガサキアゲハは、その名のとおり九州の長崎県を北限とするチョウの一種です。なぜ横浜にいるかというと、それだけ気温が上昇し、地球温暖化がすすんでいるということです。学びはすべて社会にあるといわれていますが、この子どもは、まさにそのことを実証しています。

 東北大学の石田秀輝教授は「ネーチャー・テクノロジー(自然から学んだ技術)が今後、環境問題への対応で大きな鍵を握る」といっています。
 以下の事例は、新聞記事からのものです。
 最高速度を上げた新幹線は、パンタグラフが風を切る騒音をいかに低くするかが課題だったそうですが、ヒントになったのは、夜獲物を捕まえるフクロウでした。羽の周りに空気の渦をつくりながら、静かに滑空する、これを応用し、騒音の低下につなげたそうです。

 多くの医薬品は植物から得たものだそうです。ヤナギの樹皮の成分に鎮痛・解熱作用があることに着目し、アスピリンが合成されました。インフルエンザに効くタミフルの成分は、中華料理の食材でもある八角から抽出されます。
 ほかにも、食材や木材に使われたり、水や土、空気を浄化したりする様々な生物が、現代の物質文明を下支えしています。ところが、世界の生物は、恐竜が姿を消した時代以来の大量絶滅に直面しているそうです。乱獲や乱開発、都市化、外来生物の侵入などが原因です。生物の絶滅を防ぎ、多様性を保っていくことは、地球の生命や文明の基盤を守ることにほかなりません。

 日本がつくった「生物多様性国家戦略」は、野生生物が生息する森林や里地・里山の増加、渡り鳥に欠かせない干潟の保全・再生、漁場の堆積物除去などの数値目標を示しています。企業や市民がどのように保全活動にかかわっていくかも大きな課題です。住宅メーカーの積水ハウスはNGOの協力を得て、「5本の樹」計画を進めています。戸建の住宅の庭をつくるときに、「鳥のために3本、チョウのために2本」の木を植える。それが地域に広がれば里山のような環境になり、野鳥も増えるとの期待があります。

 「どれだけの生物絶滅に、地球が耐えられるか誰にも答えはない。地球規模の取組から身近な保全まで多彩なアイデアを繰り出し、早めに行動するしかない。」と新聞はいっています。
 日本では、今年5月、生物多様性基本法が成立しました。国だけでなく自治体にも対策の実行を求めています。
 港北区役所はこの夏、子どもたちの協力を得て、区内のセミやトンボの生育状況を調べる計画があります。身近な自然がどのようになっているかお子さんと共に探検してみることは、多様な生物の微妙なバランスの上に成り立っている地球を持続可能な形で次世代に残すことに繋がるのではないでしようか。

6月の学校だより「人権尊重の精神を基盤とする教育」についてを読んでいただいた保護者の方から、ご家庭で実践されている人権尊重の精神の育成や社会のひずみの中で生きている子どもたちの大人の役目についてご意見をいただきました。発信すれば応えていただき、家庭や地域と連携した「思いやりの心をもち、お互いのよさを認め合おうとする子の育成」の取組が実現できるということを確信いたしました。ありがとうございました。今後もご意見をお寄せください。

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