幼・保・小教育連携開発モデル校・モデル園事業中間報告
あけぼの幼稚園
並木幼稚園
並木保育園
並木第一小学校
1 並木第一地区の立地的な概要
   並木第一地区は、金沢区の北部に位置し、並木第一小学校・並木保育園・並木幼稚園・あけぼの幼稚園の1校3園で構成されています。
 並木第一小学校を中心に、どの園も子どもの足で歩いて10分以内の近い場所に位置しています。周りには団地が建ち並び、緑が多く、公園もたくさんあるため、散歩などで近くを通ると、お互い手を振る光景が多く見られています。
 また、小学校の向かい側には、富岡東中学校があり、子ども自身が、自分が上の学校へ行く楽しみを感じることができるようです。

2 研究テーマ
     子どもが主体的に創る学びを大切にする学校を目指して
     〜人とのかかわりを通して豊かな人間関係を築いていく〜

3 テーマ設定の理由
 昨今、「コミュニケーションを上手にとれない子ども」が増えてきたと耳にします。われわれ並木第一地区の園児も児童も例外ではないようです。大人との関わりはもとうとしますが、異年齢の園児・児童はもとより、同学年の子どもたちとですら上手に関われない子どもが多く見られます。
 日常の子どもの様子をよく見てみると、関わりたい、仲良くしたいと考えている子どもが多いことが分かってきました。ただ、そのための適切な方法を知らないために、うまく関わることができず、トラブルになってしまうことも少なくはありません。もし自分がされたらどうかと、人の気持ちを考えることが苦手であったり、それとは反対に、自分の本当の気持ちを表現できず、人の言いなりになって自分を抑えてしまい、人間関係にストレスを感じてしまったりする子どもが多くいるようです。園や学校でよりよい人間関係を築くことで、毎日の学校生活を楽しめることを願って、テーマを設定しました。
 
4 研究の方向性
 小学校を軸として、幼・保・小の連携をより強く図り、長いスパンで子どもたちの成長を見ていくことにしました。並木第一小学校の学校教育目標は「わたしの生活は、わたしが創ります」です。これは子どもたちの自主性を核にした生きる力の育成を目指すものです。その3本柱の一つ、「共生」の項目では「子どもたちが、豊かな人間関係を築いていく力を大切にします。」と掲げられています。先ほどお話した、コミュニケーション能力が乏しい子どもが多い中、いかにして自主性を核にした「生きる力」を育んでいくかということは、私たち本校の職員に突きつけられた、早急にそして継続的に取り組むべき課題であると考えました。「豊かな人間関係」を支える根本となるのは「人とのかかわり」であり、それを通して個を育て、また、個が集団を育てていくという考え方を共通理解し、それを各ブロックテーマや各園の教育活動に反映して研究を進めてきました。
 研究方法の一つとして、「Q-U(アンケートによる学級生活満足度調査)」の分析結果の資料をもとに、学級づくり、授業改善に向けて研究してきました。また、ソーシャルスキルトレーニング(以下SSTと言います。)構成的グループエンカウンター(以下SGEと言います。)等の研修を行い、学級経営に生かしてきました。幼・保では、SGEの財を利用して、ゲーム感覚で行っています。
 学校生活や園生活の基盤をなしている集団生活。その「望ましい集団」を支える根本となるのは「豊かな人間関係」の構築であることを私たち職員が理解し、そのための適切な手段や方法を学びながら、研究を進めてきました。集団の中で個が育つ、個を育てていくということを重視していくことで、個も集団も豊かに成長していくのではないか、また、子ども一人ひとりの学力・体力・知力の向上にも結びついていくのではないかと考えています。
 
5 交流のねらい
 まず、わたしたち職員が様々なスキルを身につけることが大事であるということから、研修会や研究会を開催しました。わたしたち職員が顔を合わせ、交流することによって、様々な話を気軽にすることができるようになり、子どもたちの理解につながっていくことをねらっています。
 また、年齢に応じた子どもたちの理解から、子どもたちが新しい環境にスムーズに馴染めるような支援のあり方を探っています。職員間の交流については、後ほどくわしくお話します。
 
 人間関係づくりという観点から、園児・児童のみならず、異学年・中学生・高校生・地域社会という多方面にわたる交流活動を行ってきました。交流することによって、園児や児童にあこがれが生まれ、育ちあいが見られることをねらっています。
 「人は、人によって育てられる。」という基本を改めて確認することができました。

  6 平成17年度の交流内容
      6−@ 職員間の交流
 この研究を進めるにあたって、子ども同士の交流だけでなく、職員間の交流も積極的に行なってきました。
    昨年度からの職員間の交流について具体的にお話します。
 まずは、幼・保・小の教職員が、それぞれの生活や授業を見学しました。子ども達の生活を、実際に見て肌で感じることで、「幼稚園・保育園から小学校に入学していく子ども達が、負担なくスムーズに生活していくために、どんな配慮をする必要があるか」ということについて、具体的に子どもの姿をイメージしながら考えることができました。
    幼・保・小の職員が小学校の研究授業を参観し、後の研究討議にも参加しています。
研究会が始まる前には、小学校で子ども達のコミュニケーションのために取り入れている、「ショート エクササイズ」と呼ばれている「触れ合いゲーム」を、集まった職員でも毎回行なっています。私たち自身、心が解放されていく感覚を子どもと同じように体感することができています。
話合いの前に、ショート エクササイズをすることで、緊張感がほぐれて、和やかな雰囲気での意見交換ができ、職員同士の心の触れ合いやコミュニケーション作りの助けにもなりました。
この経験をもとに、幼稚園・保育園でも、職員会・保護者会などにこの「ショート エクササイズ」を取り入れるようになりました。
 また、人間関係づくりを軸にした授業を見たり、討議に参加したりする中で、子ども達の人と関わる力を育てると同時に、学習のねらいも達成していかなくてはならないという、学校教育の難しさも知ることが出来ました。
 幼稚園・保育園・小学校の職員がそれぞれの視点で意見を出し合うことで、「幼稚園・保育園では、どんな経験をしているのか」「幼児期からの経験が、どう学習につながっているのか」などの話も交えながらの討議ができました。
 その他にも、子ども達がコミュニケーションの力をつけていくために小学校で行なわれている「SST」「SGE」についての講師を招いての職員研修に、幼稚園・保育園の職員も参加して、知識を学びました。また、子どもへのアンケートをもとに、クラスの状態を把握して、その対応を考えていく、「Q−U」の検討会にも参加して、互いを認め合える学級を作っていくために、どう指導していったらよいのかを共に考えました。
 今年度の始まりには、幼稚園・保育園・小学校のすべての職員が集まって、ショート エクササイズを通して親睦を深めたり、「連携をし合って、子どもの成長につなげていきましょう」という気持ちの確認をしたりしました。
 私は幼稚園の職員という立場で、保育園・小学校の先生方との、いろいろな話合いに参加しながら、「今、私達が幼稚園で感じたり悩んだりしていることが、小学校でも同じように問題になっていること」「幼稚園での子どもの姿と小学校に行ってからの子どもの姿の両方を見通しながら、解決の方法を幼・保・小の教員みんなで探っていく必要があることを感じました。
 まだまだ、手探りの状態ではありますが、教員同士のかかわりの深さが、子ども同士の関わりの力を育てていくことにつながることが、ここまでの研究でよく分かりました。これからも「子どもを育てる」という同じ土俵の上で、私達教職員が心を通わせながら、連携していけたらと思っています。
 
      6−A 子どもたちの交流
 研究推進校になる前も、地の利を生かして、交流活動は行ってきました。「運動会」「並一博」「秋となかよしランド」「作品展」「学校案内」「防災訓練」など、園児は様々な小学校の行事に参加していました。
 昨年度は、推進校・推進園として交流をさらに深めようと、以前よりも、ささいなことでも交流の機会を増やしていくように努力しました。
 17年度の交流の一部を紹介します。11月。幼稚園に一年生が来て、小学校の行事で発表した「くじらぐも」の歌と語り聞かせを見せてくれました。子どもたちは、「すごかったね。」「かっこよかったね。」と、強くあこがれの気持ちをもったようです。長い台詞をすらすらと話すお兄さん・お姉さんに感激し、集中して見入っていました。その後で、一緒に、園庭や保育室で、ドッジボールやどろけい・折り紙など、好きなことをふれあいながら遊びました。
 2月。年長児が、何度か学校の休み時間に遊びに行き、教室を見たり、体育館で遊んだり、紙芝居を読んで聞かせてもらったりしました。校庭では、花いちもんめやドッジボール・なわとびなどをして、一緒に遊びました。遊びの中で関わりながら、お兄さん・お姉さんに、なわとびの二重跳びを見せてもらって「すごーい。」と感動していたり、「上手だね。」と言ってもらって、うれしそうにしていたりなど、たくさんの刺激を受けながら、楽しそうに過ごしていました。
 2月の終わりには、一年生の子ども達が、相談して描いた絵を見せながら、学校の一年間を紹介してくれたり、学校の中を手をつないで案内してくれたりしました。その後で、体育館で一緒に「変身ジャンケンゲーム」や「○×ゲーム」をして遊びました。
 3月には、学校の授業を、自由に見学させてもらいました。子ども達は、真剣に勉強している雰囲気を肌で感じました。緊張している子どもも中にはいましたが、新しい場への不安が少し減り、学校に行くことへの期待感をふくらませているようでした。
 卒園式の時には、入園後に学校でお世話をしてくれる5年生の代表のお兄さん・お姉さんが式に参加して、「学校は楽しい所です。わからない事は何でも聞いてください。」とお祝いの言葉とともに、「待っているよ。」という温かいメッセージを贈ってくれました。
   
  7 平成18年度の交流内容
    今年度に入り、より深い交流が出来るようにと、中心になる交流の対象を決めました。
    あけぼの幼稚園年長児と 小学校2年生(7−@)
    並木保育園児    と 小学校5年生(7−A)
    並木幼稚園年長児  と 小学校1年生(7−B) です。
   
      7−@【あけぼの幼稚園】
    年度当初に小学校と幼稚園・保育園の職員で話し合って、年間の交流の見通しを立てました。
 子ども達がより深く関わり、育ち合っていくことをねらいに取り組んでいます。漠然とした交流でなく、ひとりひとりが相手の顔や名前を意識しながら、深く関わっていけるように考えました。1グループ6人位の交流グループを作ったり、配慮の必要な子の様子を伝え合ったり、集まったときに一緒に歌える共通の歌を決めたりなど、職員間でアイデアを出し合い、話合いをしつつ、交流を進めています。
 あけぼの幼稚園児と小学校2年生との交流について、具体的にお話していきます。今年度の交流は、5月にスタートしました。この日のために、2年生の子ども達が、お楽しみの集会を企画してくれて、自分達で作った踊りを、「さんぽ」の歌に合わせ踊って教えてくれたり、「色鬼」や「じゃんけん汽車ぽっぽ」のゲームも実演を交えながら、丁寧に説明して教えてくれたりしました。初めての学校、初めて出会う2年生のお兄さん・お姉さんを前に、園児たちは、少々緊張ぎみでしたが、手作りペンダントをおみやげにもらって、大喜びでした。
 2度目の交流は6月、今度はあけぼの幼稚園に2年生が来てくれました。ホールでグループ毎に丸くなって、名前を教えあいっこし、「ねずみチョロチョロ」のゲームをしたあとで、園庭でしゃぼん玉遊びをしました。ストローだけではなく、ラップの芯・大きな輪・画用紙を丸めたもの…いろいろなものを使っていろいろな膨らまし方でできるしゃぼん玉を見て楽しんでいました。
 7月には、国語でやっている「スイミー」のお話を読み聞かせしてくれました。このほかにも、2年生が野菜の苗の成長を幼稚園の畑に見に来て、その後一緒に遊んだり、学校の休み時間に遊びに行かせてもらったりなど、お互いに行き来をしながら交流しています。

7−A【並木保育園】
    次は、並木保育園児と小学校5年生との交流の様子についてお話します。
 4月、5年生と初顔合わせです。校庭で7つのグループを作り、名前を教え合いあいさつをしました。ジャンケン列車、グループ大縄飛び、などの遊びを楽しみました。
 5月、一緒に遊びました。体育館で紙芝居を見せてもらったり、前回作ったグループで手つなぎおに、フープを使った競争ゲームなどで遊んだりして、親睦を深めました。これらの遊びを通しての交流の中で見られた、子どもの様子についてお話します。
*なわとびが「できない。」とうずくまったA児に、5年生は「大丈夫だよ。ヘビなら出来る?」 と工夫してくれました。そういう状況になるといつもはなかなか立ち直れないA児も、「うん。」と頷いて笑顔になり楽しむことができました。5年生のやさしい声かけに関心した場面でした。

*遊びの集団に入れず、一人離れてしまったB児に対し、ひとりの5年生がそばについて根気よくいろいろ話しかけてくれました。おかげでB児にも笑顔が見られ、自分から「おにごっこやろう。」と5年生を誘う姿も見られました。結局、最後まで全体のあそびには参加できなかったものの、B児にとっては楽しく心地よい時間になったことでしょう。

*手つなぎおにでは、ルールについて説明を聞いても完全に理解はしていないようでした。しかし、走ることが面白く皆ニコニコと走り回っていました。5年生のリードで捕まったら、手をつなぐこともやりながら分かってきたようでした。

 他にも、こんな交流をしています。作物を一緒に育てようと、5年生と一緒に、さつまいもを小学校の畑で育てています。水やりや草とりをしながら生長を見守り、収穫を楽しみにしてる姿が見られます。また、米作りもしています。小学校から稲の苗を頂き、発泡スチロールを用意して田植えをしました。手入れの仕方を5年生に教わりながら、生長を見守り、収穫を楽しみにしています。
 このような交流を重ねたことで、小学生が放課後に遊びに行く途中、園児が園庭で遊んでいるのを見て「〜ちゃん、同じグループだよね。」などと声をかけてくれるなど、今までには見られなかった自然な声かけが聞かれます。親しみを持ってくれているのがわかり、内面的な成長が感じられました。
 今後の予定としては、5年生が取り組むエコロジーの勉強に、保育園児も一緒にできることを考え、これまで培った人間関係をもとに、楽しみながら交流を進めていきたいと思っています。

      7−B【並木幼稚園】
    次に、並木幼稚園児と小学校1年生との交流の様子についてお話します。
 6月、一年生2人と園児3〜4人でグループをつくり、サツマイモの苗を小学校の畑に植えました。幼稚園には畑がないということを耳にし、1年生が一緒に植えようよ!と声をかけたことから始まりました。土の堀り方・苗の入れ方・水やりの仕方など、一つひとつ丁寧に教えてくれるお兄さん・お姉さんに、最初の緊張もなくなってきた園児でした。帰園後は、「大きくなったら堀りに行きたい!」「みんなで食べたいな!」という話題で盛り上がっていました。家に帰ってから、おうちの人に嬉しそうに話した園児もいたようです。
 7月、「一緒にあそぼう」と小学校の体育館で1年生と園児が交流しました。まず、パズルのピース合わせからグループになり、自己紹介が始まりました。1年生の名前を聞いて、どんなお兄さん・お姉さんなのかな・・・と期待に胸を膨らませていました。ジャンケンから、ジャンケン列車に発展していき、全員が一つに列車になったことが、とても面白かったようです。1年生に「○○さん。」って呼ばれたことが、園児にとっては、「大きくなったみたいで、嬉しかった」ようです。充実感いっぱいな笑顔で話してくれました。「また、遊びたい!」「今度は、幼稚園に来てほしいな。」と次に会うことを、とても楽しみにしていました。



      7−C【並木第一小学校】
 小学校3年生と4年生は、ペア学年として1年を通じて交流しています。運動会の演技「ソーラン節」を4年生がペアの3年生に教えたり、ペア学年で一緒に出かける遠足の相談をしたりと、ともに活動していることが多くあります。また、小学校6年生と富岡東中学校1年生が、学習を通じて交流を始めています。6月には、小グループになって、非行防止エクササイズを通して、問題をともに考えました。
  このように、さまざな交流の機会を増やしてきました。

 8 研究の成果と課題 
    最後に研究の成果と課題についてお話します。
 並木第一地区は、地の利を生かし、すでに幼保小連携や小中学びあいなどの交流は行ってきていました。昨年度から、「人間関係つくり」という視点からの異学年交流を行っていくことにしました。その中で今後も交流が無理なく継続していくように、幼、保、小それぞれがカリキュラムの中に位置づけ、日常化していくことが必要です。そのために、一年間を通してのねらいをはっきりさせた授業交流のあり方について考えていく必要性があると感じています。
 まだ、研究の途中ではありますが、「人間関係づくり」という視点から、「幼児期から学童期にわたっての共通のカリキュラムづくり」にも取り組んでいます。
 幼・保・小それぞれが持っている、年齢毎のねらいを持ち寄って、照らし合わせ、お互いの思いを伝え合うことで、子ども達がどんなふうに人と関わる力を付けていくのかを、共通理解することが出来ました。また、人間関係づくりのねらいを見たときに、幼稚園・保育園は「ひとりひとりにどう関わり育てるか」という個人に重きをおいていて、小学校は「集団として、集団の中のひとりとして、どう育てるか」というところに重きをおいているという、微妙な違いに気づきました。そこから、幼稚園・保育園から小学校へのつながりをスムーズにするためには、幼稚園・保育園では就学前の時期に、もっと「集団」という視点を持って指導することが必要であり、小学校は、ひとりひとりに重きをおいたところからスタートすることで、連続性のある指導ができるのではないかという方向性が見えてきました。
 また、職員間の打ち合わせ、話合いの時間を調整しながらどう作っていくかが課題です。せっかく交流ができても、結果の振り返りの時間が持てず、次回への課題なども話し合えないことがほとんどです。せめて、事前の打ち合わせがしっかりできれば、交流会の内容も小学校、幼稚園、保育園とお互いの視点から見た物事が生かされるのではないでしょうか。子ども達同士がより深く関わり合い、育ち合っていくために、どんな内容の交流をもっていったらよいかを考えていくことが大切です。
 昨年度の研究の終わりに、発達段階に応じたコミュミケーション能力の段階を試作してみました。この発達段階のめあてに視点を置きつつ、子どもたちの成長の連続性を探っていきたいと考えています。