学校だよりから
6月号     新幹線・鉄塔・鶴見川

副校長 本村 淳一


  私が大曽根小学校に来て、2ヶ月が過ぎようとしています。転任すると始めのうちは慣れるのに精一杯でなかなかゆとりがもてないものですが、大曽根小学校のスポーツフェスティバルを経験し、ようやく子どもたちや、保護者の方々との距離が縮まってきたかなという感じがしています。少しゆとりが出てくると、今まで目にしていても、あまり気にかけなかったものに興味が湧いてくるものです。職員室の入口に3枚の写真があります。それは、新幹線と鉄塔と鶴見川の写真です。3枚の写真があるのは知っていましたし、特に新幹線の写真には、開通当時の0系車両が写っていて、 懐かしさを感じていました。 最近、その3枚の写真がなぜ展示してあるのか、ようやくわかったのです。それは、大曽根小学校の1番から3番までの校歌の象徴として展示してあったのです。なぜなら、それぞれの写真の下に、校歌も一緒に掲示してあったからです。
 これらの写真を見ていて、感じたことは、一言で言えば、「昭和」と言うことでしょうか。それも「高度成長期」という日本が経済成長を始めた頃のものです。
 「0系新幹線」。 新幹線が東京と大阪の間で開業したのが、 昭和39年10月1日です。その年には、東京オリンピックが開催されました。私は、小学校1年生。今でも、東京オリンピックのファンファーレを口ずさむことができますし、日本選手団の入場の様子に胸が躍ったことを覚えています。「鉄塔」。 私は大曽根小学校に来て、 空を見上げると、たくさんの太い電線が何本も空を横切っていることに驚きました。きっと、校歌にまでこの鉄塔が歌われているわけですから、その大きさは当時から人々を驚かせてきたのでしょう。何本もの太い電線をあの巨大な鉄塔でつなぎ、神奈川県北部や東京都西部に電気が送られているのでしょう。きっと、高度成長期に電力需要が増大したのだと想像できます。「鶴見川」。鶴見川の向こうには、ビルが全くなく、綱島公園まで見渡せる綱島の町が写っています。大綱橋も今のものとは違っています。きっと静かな保養地としての綱島温泉だったのでしょう。このように3枚の写真には、40年前の綱島の姿が「昭和」として映っているのです。高度成長期に10代20代を過ごしてきた私には、あまりにノスタルジックな写真です。時は流れて、年号は「平成」となり早20年。今や、日本は「成熟社会」と言われるようになりました。「0系新幹線」は「N700系新幹線」となり、高速鉄道網が日本中に整備されました。鉄道だけではなく、航空網も整備され、今や、日本はどこでも日帰り圏となりました。巨大な「鉄塔」に繋がれている電線には、当時とは比べ物にならないくらい多くの電力が送られているはずです。私たちの生活が多くの電化製品に囲まれていることを考えれば、至極当然のことです。スイッチ一つで、風呂が沸き、食品が温まり、お皿が洗える。パソコンからは、インターネットで多くの情報を得られ、遠くの人と繋がることができる。すべて、電気のおかげです。「鶴見川」の川べりの綱島の街は、たくさんのビルが立ち、夜遅くまで賑わっています。鶴見川の川面は、綱島のネオンを映し出しています。
 「昭和」と言えば、最近「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画がありました。確かに、あの映画を観ると、私が子どもの頃の町並みがあり、人々の暮らしに共同体的な雰囲気があり、懐かしさを感じるわけです。一方で、最近の人々の暮らしや考え方との大きな違いを意識せざるを得ないことも事実です。あの映画の中では、携帯電話をもっている人は1人もいませんし、コンビニもありません。また、人々の生活は、豊かではないけれども、表情は穏やかであり、所作に慎ましさを感じます。
 大曽根小学校が開校して40年の間に、私たちの生活は大きく変わりました。そして、いつの時代にも「子ども」がいて、子どもたちは、その時代の影響を大きく受けながら、成長していきます。大曽根の子どもたちは、「N700系新幹線」を見て、大量の電力を送っている電線を支えている「鉄塔」を見上げ、「鶴見川」の河岸の賑やかで便利な綱島で暮らし、生活しているのです。もし、これら3風景を写真に撮ったとしたら、まさに平成の「成熟期」にある3枚の写真となるでしょう。
  この「昭和」と「平成」の風景の変化の中で、私たちは、その変化をどのように受けとめてきたのでしょうか。なぜ、「ALWAYS 三丁目の夕日」の中に、どこか納得できることが少なからずあるのでしょうか。 昭和の風景の中で、 ALWAYS的だったものが、平成の風景の中ではALWAYS的でなくなってきたからでしょうか。それでは、そのALWAYS的なものとは一体何なのでしょうか。学校という教育現場に見られる様々な変化とALWAYS的なものを考えながら、職員室前の3枚の写真を、時々、足を止めて眺めています。



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