<夏季研修旅行報告>

「うた」とともに 知られざる歴史・風土を尋ねる”学び”と”癒し”の旅

 


毎年好評の夏の文学旅行。今年の旅のテーマは、『「うた」とともに知られざる歴史・風土を訪ねる“学び”と“癒し”の旅』と題し、童謡詩人の野口雨情とかえるの詩人草野心平のふるさとを訪ねるため、福島県北茨城市および福島県いわき市方面へと向かいました。

今回の旅の魅力は、全行程バスをチャーターして行動したこと。横浜で集合し、北茨城方面に向かう道中、バスの中はすぐさま野口雨情についての勉強会に変わりました。参加者それぞれがもっている雨情についての知識や雨情への思いを語り合ったり、「七つの子」や「しゃぼん玉」の唄を歌ったりして、みんなで雨情の世界に浸っていました。北茨城市に到着すると、雨情の生家と記念館を訪れました。美しい海を臨む生家にて、雨情の生い立ちや詩に込められた思いについて、詳しい説明を聞くことができました。「童謡は、児童の精神生活を指導し、彼等をして一個人の人格者にまで円満に生育せしむる力となるものでなければならない。」という雨情の童謡に対する深い思いを知り、感銘を受けました。昼食後、午後は美術家、岡倉天心の世界へ。天心記念五浦美術館や天心が思索にふけった六角堂を巡り、天心が愛した大海原を眺めながら、近代日本美術の発展に大きく貢献した天心の足跡を辿りました。特に天心が設立した五浦日本美術研究所で肩を並べながら制作に励む横山大観や下村観山らの写真は、圧巻でした。

二日目は、いわき市の方へ移動し、かえるの詩人、草野心平のルーツを訪ねました。バスの移動中、心平が生まれ育ったいわき市小川村で同じく生まれ育った酒井先生から、地元ならではの情報も交えながら興味深いお話をたくさん伺うことができました。最初は草野心平記念館を見学しました。豊かな森と湖に囲まれた文学館で、時代の流れとともに、人間・心平の歩み、詩人・心平の詩作の道を辿りました。その後、しばらく故郷を離れていた心平が、様々な思いを抱え再び故郷に戻る際に降り立った駅のホームを実際に歩いたり、心平の生家や心平が営んでいた貸し本屋があった場所を訪れたりしました。ふと心平が目の前に現れるような、そんな錯覚に陥りそうなくらい身近に心平を感じることができました。心平のルーツを探った後は、心平が晩年、数々の有名な詩を生み出した川内村へと場所を移しました。川内村では、村の教育長である石井様に案内をしていただきました。また、心平が川内村に訪れた際に、身の回りのお世話をしていた菩提寺の住職さんにもお話を伺うことができました。住職さんが幼少の頃に出会った心平とのなつかしい思い出を聞き、心平の人間らしい一面を垣間見ることができました。心平が多くの時間を過ごした天山文庫では、詩作をしていたのがつい最近のことに思えるほど、心平が住んでいた佇まいがそのまま残されていました。かえるの詩のルーツであるモリアオカエルが住む平伏沼を訪れることはできませんでしたが、田園風景が広がるのどかな川内村を歩いていると、「ケルルン クック」という鳴き声があちらこちらから聞こえてくるような気がしました。

今回の旅では、北茨城近海の海の幸(岩牡蠣など)を味わったり、川内村の自然が育んだ山の幸を味わったりと、地元の食材を堪能しました。また、宿泊したホテルにある絶景露天風呂の温泉につかり、岡倉天心もながめた広大な水平線を遠くに見ながら、旅の疲れを癒しました。行く先々での様子や印象を、それぞれが俳句や短歌のようにまとめて、最後にそれをつなぐという「連句」を山本要子先生が指導してくださったおかげで、違った旅の楽しみ方を知ることもできました。遅い梅雨明けが発表されたちょうどその日に行われた今年の文学旅行ですが、天気にも恵まれ、とても充実したものになりました。今まで文学旅行のためにご尽力いただいた原沢先生を偲び原沢先生とともに旅をした、そんな思い出深い旅行でした。                           

>>参加者の声<< 私は今回初めて文学旅行に参加しました。退職された先生方から直接授業に役立つたくさんの知識やアイデアを教えて頂くことができ、とても有意義な旅となりました。多くの方々との出会いも今回の旅行での貴重な収穫でした。心平の詩についての授業をどうするか、頭の中はたくさんのアイデアでいっぱいになりました。授業が楽しみです。