日野中央高等特別支援学校長あいさつ

副校長  樋野 欣一 

 初心忘れるべからず 

                              

 3月末、洋光台へ向かう坂を登り、日野中央高等特別支援学校にやってきました。

 隣の日野養護跡地がきれいに整地され、桜の花がもうすぐ盛りを迎えようとしているのが目に入りました。瞼を閉じれば、今と同じように期待と不安を抱えながら日野養護の門をくぐった29年前の自分の姿が思い出されます。

 養護学校義務制が開始された年で12名の初任者がいました。子どもたちの指導に悩み試行錯誤を繰り返し、大学で学んだことと現実とのギャップに戸惑いながら、目の前にいる子どもたちの自立へ向けた指導法を工夫・改善しながら取り組んでいました。諸先輩方からは「僕は君たちに教えることはしない。けれど僕のやり方を見て盗むのは構わない。」と言われたりもしました。自らの努力による教育の創造が強く求められていました。

 最初に担任した生徒の一人、中学部のKさん。ADLの確立・向上に向けての指導が始まりました。スモールステップを設定し、さまざまな刺激を利用しながらトレーニングを進めました。しかし、何度やっても私の働きかけに対し、返ってくるのは泣き顔ばかり、自傷行為を繰り返し、その都度、落ち着かせてから指導をやり直すということが毎日続きました。1ヶ月後には「もうダメだ。私を受け入れてはくれないんだ。」と思うようになり、先輩に相談しました。「同じ泣き声でも違うだろ。Kさんの心に寄り添ってみればいいんだよ。」と言う答えが返ってきました。私は目標を達成しようとするあまり、相手の気持ちを考えずに自分のスケジュール、プランのみに沿った指導をしていたのです。まず相手を認めること、相手に認めてもらうこと。意志・感情を持つ一人の中学生として接していなかった自分に気が付きました。「障がい」ばかりに着目し、もっと私のことを知ってよというサインに気づかないでいたのです。精神的に落ち着くような環境に変え、より細かく観察し、言葉かけを増やし自発的な行為を促すように努めました。しばらく進めていくうち、泣き声や気持ちの変化に気づくようになりました。ある日、「Kさん おはよう。」と呼びかけるとニコッとした笑顔が返ってきました。本当に嬉しかった。やっと認めてもらえたのかなと感じました。

 その後、小学校、中学校、養護学校など色々な場面で子どもたちの指導に当たってきました。生徒が戸惑っている場面に出会うと「相手の立場にたち、相手の思いを考え、寄り添っていくこと。」を念頭に改善を図ってきました。

 今、副校長として特別支援学校に戻ってきました。 『初心忘れるべからず』 教育の原点である"人を育む"ことを胸に刻み取り組んでいきます。今後とも本校の教育活動へのご理解・ご支援をよろしくお願いします。