視覚障害とは

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盲特別支援学校指導実践事例1

点字使用児童生徒のための漢字指導資料作成とその活用

1.区分
実践事例
2.学校名
横浜市立盲特別支援学校
3.URL
http://www.edu.city.yokohama.jp/ss/yokomou/
4.障害種別
視覚障害
5.タイトル
点字使用の児童生徒のための漢字指導資料作成とその活用
6.対象児童の状態
  • 小学部1年 全盲(先天盲)
  • 小学部2年 全盲(中途失明)
7.キーワード
点字,漢字指導,点図,コンピュータ文字処理,漢点字
8.学部・学年
  • 小学部低学年の文字指導および小学部の国語指導と自立活動の指導
  • 視覚障害者にとって,近年の情報機器の進歩と活用は学習や生活のための情報量の確保を図るだけでなく,社会自立に向けての大きな礎となる分野である。それらを見通したときに,点字による文字獲得が可能な児童生徒には,表音の仮名体系の点字文字だけでなく,言葉の意味の理解を助けるための表意文字の漢字導入が不可欠である。さらには,漢字仮名交じり文が書けて一般社会に通用する文字処理能力と情報機器活用能力を身に付けさせることが,今後の盲教育における大きな指導の重点になると考えての小学部低学年段階からの取り組みである。
9.教科・領域区分
国語および自立活動の指導
10.授業者名
道村静江
11.授業実施期間
平成12年11月頃から継続
12.単元・題材名
国語の漢字指導および自立活動の時間における文字指導
13.単元の目標
  • 小学校低学年程度の漢字の構造を理解し,基本的な漢字をレーズライターなどで書けるようにする。
  • 小学校中学年以上の漢字の構造を部首の構成で理解する。
  • 漢字の音訓の読みとその活用語例を十分に理解し,言葉にどの漢字が使われているかを理解できるようにする。
14.メディア活用の意義
  • 漢字教育を導入する目的は,点字使用の児童生徒が漢字を書けるようになることではなく,音訓読みを理解して,漢語読みの言葉の理解を深めることと漢字仮名交じり文を書くための漢字選択が正確にできるようにするためである。
  • 従来の指導は漢字の字形や書きは無視して音訓の読み方に重点をおいていた。その理由は,漢字の字形を簡単に作れる有効な点図ソフトがなかったことで文章による漢字解説文のみであったり,たとえ立体コピーによる字形を作成しても触読効果や保存年限あるいはその解説文を点字で表すことや加除修正に難点があったからである。
  • 今回,「点図くん」というソフトの活用で,触読効果の高い点図による漢字体を入手できたことにより,従来からの願望であった漢字の字体と部首の構成を確認しながらその意味を理解し,音訓読みや漢字の活用の指導へとつなげることが可能になった。
  • さらには,「点図くん」と点訳ソフト「Win−BES」(日本アイ・ビー・エム株式会社)との相互変換により,グラフィックの点図の周辺に指導上必要な点字解説文を容易に入力することができるようになり,個々の児童生徒に合わせた教材作成が可能になった。
  • また,教材のデジタル化に伴い,修正加工が容易で必要なデータの抽出が随時可能になったことは大きな利点であり,長期保存がきく点字用紙での出力で学校での学習時の活用だけでなく,将来的に必要になったときに随時活用できる資料としてもその利用効果は大きい。
  • 学校の教育レベルの漢字指導だけでなく,将来的に各個人の能力やニーズに応じて,漢字体の偏や旁などの部首を確認しながら漢点字(八点漢字)や六点漢字を学習できるようにグラフィックで漢字の横に入力した資料も作れるようになった。(漢点字は8点構成なのでデジタル化が難しかったが,グラフィックでの点字入力可能となり,資料に載せることが可能になった。)
15.メディア環境
  • 使用機種:windowsパソコン
  • 入出力装置:点字プリンター(点字プロッターTZ100 株式会社リコー,NewESA721 有限会社ジェイ・ティー・アール)
  • 稼動環境:Windows95,98のネットワーク環境
  • 利用ソフト:点図くんソフトV2 タイプJ(株式会社リコー)
16.単元の指導計画とコンピュータの活用等
指導計画 留意点
カタカナの字形の理解と書きの指導
(約12時間)
・カタカナは直線構成で漢字の線構造との共通点も多く,盲児にとっては理解しやすく書きやすい文字なので,墨字書き指導の導入として十分に時間をかける。
・カタカナ字体をよく触り,その構成を理解する。
・レーズライターを使っての書きの指導では,ペンの持ち方,横線・縦線・斜線の書き方の指導を十分にして,ペンを動かすときの手指の動きをマスターする。
・線の始点の位置の取り方に注意して書く。
・書き順を理解する。(墨字では左上から書き始めることが多い。)
漢字の指導
(1時間当たり約3文字程度)
漢字の字形の確認 ・線の構成(縦・横・斜めなど)と始点・角・交点等の確認
漢字の書き練習 ・筆順は墨字の筆順にこだわらず,盲児の確認しやすい方法を工夫する。線の始点および角・交点・曲線を確認しながら書く。
コンピュータ音声による漢字の読み上げ例の確認 ・音声読み上げソフト「VDM−100W」(株式会社アクセス・テクノロジー)や「98Reader」(株式会社システムソリューションセンターとちぎ)による漢字詳細読みの語例を知る。
例:大−おおきいの大
   山−やまのぼりのやま
   木−じゅもくのもく
音訓読みの理解 ・訓読みの理解と送りがなの使い方
・音読みの理解
・音訓読みの語例の理解
漢語による短文作り
(家庭学習)
・語例に出てくる言葉を使っての短文作りによって,言葉の意味の理解と使い方をより深める。(同音異義語の理解にも通じる。)
17.授業展開
ア.点図ソフト「点図くん」の活用で盲児童生徒に触読可能な漢字体の作成が容易にできるようになった。このソフトでは,教員がマウスを使ってのフリーハンドで,あるいはスキャナーで文字を読み込んだり,漢字フォントを活用して様々な字体を作成することも可能であるが,盲児童生徒にとって確認しやすい触読しやすい字体は視覚上の漢字体とは異なり,その作成に当たっては,障害の特性を十分に知り,触察上の認知過程や方法を十分に研究した上での配慮ある作業が必要となる。それらを一教員の手で作成するのには非常に時間のかかる作業なので,今回は点図専門に活動しているボランティアさんの協力を得た。そのボランティアさんに触察上有効な漢字体を「点図くん」上で作っていただき,PLTファイルとして入手した。その漢字総数は現段階で教育漢字一年生80文字,二年生160文字であるが,今後短期間のうちにさらに増えていくものと思われる。
イ.この漢字体を将来的にさらに活用できるように,漢点字(八点漢字)と六点漢字を漢字体の下にグラフィック点字としてボランティアさんに挿入していただいた。
現段階では点字プリンター(NewESA721)とのハード面での相性が微妙に異なり完全な点字体の実現を見ていないが,「点図くん」発売元のリコー(株)とボランティアさんとの三者による研究でまもなくクリアーされる問題で,漢字体と漢点字・六点漢字が同時にグラフィックとして入手できるようになると思われる。
  なぜ,漢点字入力にこだわるのかと言えば,漢点字は漢字の構成や意味の理解を助ける文字として有用であるにもかかわらず,8点で構成されているために通常の点字ソフトでは入出力不可能な文字である。そのためにデジタル化された資料がほとんどないので,漢点字の入出力を実現したいと思ったからである。
  それに比べて,六点漢字は6点構成のために通常の点字ソフトでも入出力可能で,特にグラフィック入力にこだわらずに使用者が後で入力してもよいのだが,漢字を学習する上で,漢点字と六点漢字どちらにも特有の長所があり,二種類並記の状態で情報提供しておいて学習者が選択できるようにしておきたいからである。また,漢点字と六点漢字は特殊な点字であるために読み書きできる人が少ないことから,後で入手しようとしても容易ではないことなどから,最初から情報提供しておきたいと考えた。
ウ.以上の経緯で出来上がった「点図くん」PLTファイルの漢字を点訳ソフト「Win−BES」BESファイルに変換し,グラフィック編集を活用して図形として取り入れる。
エ.その漢字体の横に,指導上必要な解説文を点字入力する。ここでは個々の児童生徒の実態に合わせた内容の記入が可能であり,教員の指導計画に合わせて作成したり書き換えたりすることも通常の点字資料作成と同じレベルで容易にできる。
オ.点字解説文の構成内容は次の通りである。
  1. まず最初の1行目に,漢字のタイトル的要素として,コンピュータの音声読み上げソフト「VDM−100W」での漢字詳細読みの読み方を記す。
  2. 漢字の訓読みを記し,語幹をカギカッコ「 」でくくって区別し,続けて語尾(送りがな)をつけてその読み方を明らかにする。その後に,その読み方を使った言葉で日常的によく使われるもののうち学齢相当の児童が理解しやすい語例を記す。
  3. 漢字の音読みを記し,カッコ( )でくくって区別する。その後に,その読み方を使った言葉で日常的によく使われるもののうち学齢相当の児童が理解しやすい語例を記す。
以上の作業の結果,作成された資料は児童生徒の実態と教員側の指導計画に合わせて選択できるように,6種類のファイルが出来上がった。
  1. 漢字体のみが入ったファイル(.PLTと.BESの2種類)
  2. 漢字体,漢点字・六点漢字が入ったファイル(.PLTと.BESの2種類)
  3. 漢字体,点字解説文が入ったファイル(.BESの1種類)
  4. 漢字体,漢点字・六点漢字,点字解説文が入ったファイル(.BESの1種類)
18.上記で実践された学習活動の実際
小学部1年全盲女児が,打ち出された漢字体を読んでいるところ。字体を確認し,解説文を読んで意味を理解し,この後レーズライターで書いてみる。
添付資料は,漢字体,六点漢字,漢点字,点字解説文がかかれているものを「Win−BES」で打ち出したもの。点字と墨字両方。
19.授業の成果
ア.実際に指導を行った対象児童は,一般小学生と同じようにペンを持って文字を書けることの喜びを顕わにし,形はいびつであるがカタカナや漢字で手紙を書いてみたり,知っている人の名前を書いてみたりして,点字を知らない人との交流にも役立った。点字の他に普通文字を知ることの喜びと自信が漢字学習への取り組みを非常に意欲的にさせている。
イ.漢字の字形と意味との関係の理解においては,今まで言葉だけの説明文で理解していたのとは違い,字形を確認することによって漢字の成り立ちのイメージや漢字の構成などにも興味を持ち,理解が深まった。また,カタカナの組み合わせから簡単な漢字の構成を,簡単な漢字から複雑な漢字への構成をどんどん組み立てていくことができ,漢字の構成の確認と理解が速くなった。中学年以上の部首の構成による漢字の意味の理解もよくなると思われる。(さらには将来的に漢点字の理解にもつながると思われる。<漢点字は部首の構成によってできた点字>)
ウ.音訓読みの学習によって,今まで音でしかとらえていなかった言葉を漢字の組み合わせでとらえ,その漢語の意味をよりはっきりと理解できるようになった。語例以外の言葉でもその意味から使われている漢字を予測できる感覚が養われつつある。コンピュータ活用時の漢字選択にもつながる学習である。(さらには将来的に六点漢字の理解にもつながると思われる。<六点漢字は音訓読みの構成によってできた点字>)
エ.漢字学習以外の効果として,点図を注意深く触察し,線の形や位置の把握,部分から全体構成へとイメージをつかむ訓練が絶えず行われている学習内容であるので,盲児童生徒にとって苦手分野である点図の触察能力の向上に役立っているという意外な効果もあった。
20.今後の課題
ア.触読認識の効果が上がるような漢字体の研究および図形の作成
イ.「点図くん」ソフトと点字プリンター「NewESA721」との操作連動性の確認。
「NewESA721」は紙送り機能がベルトドライブ仕様なのでプロッタ仕様の点字プリンター「点字プロッターTZ100」と比べると紙送り精度が若干劣るという弱点を持つ。しかし,単なる図形だけの作成なら支障はないのであるが,漢点字などの点字をグラフィックで表そうとすると点字としての精度が落ちるところに現在の問題点がある。点字プリンターの操作指示を出す「点図くん」ソフトに改良を加えれば解決できそうで現在研究中である。
ウ.今回の紹介は国語の漢字教育に係る資料作成についてであったが,今後他の教科でも,このソフトを使って様々な図形を簡単に書くことができ,それを点訳ソフトに変換して点字文章入力を行えば,図のある試験問題や副教材を手軽に作ることが可能となるので,大いに活用して指導に役立てたい。また,この教材作りの方法が普及すれば教員の教材作りにも幅が出て,児童生徒の学習効果も向上するものと思われる。

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