視覚障害とは

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携帯電話による視覚障害者支援の可能性

この文章は、視覚障害者にとって携帯電話が重要な道具になると考え、そのことをいろいろな方々に理解していただきたいと思い作成したものです。

1.はじめに

言うまでもありませんが、視覚障害は情報障害です。視覚から入って来る情報の内、普通文字の読み書きと、移動等周囲の状況理解することに大きなハンディを持っています。

一方、情報技術の進展は目覚ましく、視覚障害者にとっては情報技術の活用は、日常の社会生活を営む上で今や必要不可欠なものとなっています。

そこでここでは、携帯電話に絞り、視覚障害者支援の可能性をさぐるとともに、その社会的な意義や企業・ユーザー・大学などの研究機関等の役割について私見を述べることとします。

2.障害者における情報通信技術の社会的意義

先進諸国においては既に情報化社会が到来し、情報通信(IT)技術が多くの人々の日常生活に浸透しています。しかし、全国民がこの社会に広く普及したIT技術のメリットを等しく享受できない現状があります。

特に、視覚障害をもっている人々は、IT技術が使えない、あるいは使いにくいといった問題のため、社会経済的に大きな不利益を蒙っている場合が多いのも事実です。この問題を解決してくためには、障害者、高齢者にやさしいユニバーサルデザインの確立が必要になると考えています。

米国では、障害者や高齢者などのIT弱者もIT機器システムが提供する情報に対して、障害をもたない健常者とおなじようにアクセスできる(Accessible)ことが市民権の一つとして重要視され、各種の法律によってアクセシビリティ(Accessibility)の確保が義務付けられています。

また、米国において障害者が、健常者と同じように働く権利を持つことは、1990年に成立したADA法において市民権のひとつとして確立されてはいますが、その後10年を経過した2000年においても、障害を持つ成人の半数は雇用されていない現状にあると言われています。

このように、障害を持つ人々が働けないことによる経済的な損失は膨大で、米国では、年3,000億ドル(約36兆円)と推定されています。一方、米国における仕事の60%は、IT技術を使いこなす能力が必要とされると言われ、その職場でアクセシビリティに問題があれば障害者は就業できないということになります。

この状況は、日本においても同様です。もし、アクセシビリティが確立されていれば、多くの障害者が就業できるようになり、社会保障費の支出が減るとともに、国民総生産高の増加が見込まれると考えられるのです。したがって、アクセシブルなIT製品を開発していくことは、IT企業にとって社会的な意義を持つと同時に、市場拡大というメリットがあるのです。

3.携帯電話の応用範囲

携帯電話は、いつでも、どこでも電話がかけられるということで、爆発的な普及をみせました。

健常者にとっても、それは大変便利なものですが、その便利さに加えて、視覚障害者にとっては、いちいち公衆電話をさがす必要がありませんし、さらには、道に迷ったり、アクシデントに巻き込まれた時等、家族や友人との連絡が速やかにできるということも大きな意味があります。まさに、私達視覚障害者にとっては、命綱というべき意味を持っていると言ってもいいでしょう。

次に、携帯電話は、メールの機能を持つようになりました。携帯電話を使ったメールの最大のメリットは、時間と場所を選ばずに相手に自分の意志を伝えることができ、また、自分の都合の良い時間と場所でメールを読むことができるということにあります。それに、利用料金が安いということもあるでしょう。現在視覚障害者は、パソコンを使ってメールの送受信を行っていますが、携帯電話でメールができるとなれば、その応用範囲は、さらに大きなものになるでしょう。

例えば、自分の名前や住所を携帯電話に表示させて相手に伝えたり、またその逆に相手の名前や住所・電話番号・要件等を携帯電話の受信機能を使ってメモ帳がわりにしたり、聴覚障害者とコミュニケーションを取ったり、さらにこれからは、メールの容量が大きなものになれば、小説等を携帯電話を使っていわば読書機として使うことも可能になるでしょう。

このように考えると、このメール機能が視覚障害者に使えるようになれば、さらにいろいろな利用のし方(応用範囲)が産み出されてくると考えられるのです。

次に、携帯電話は、インターネットのWebページが利用できるようになりました。紙のメディアで流通しているものはその多くがWebページに掲載されているといってよく、雑誌や新聞と並ぶメディアのひとつとして定着しています。また情報の閲覧以外にも、銀行口座の照会や電車や飛行機などの予約サービスそれからオンラインショッピング等も行われています。

もし、これらWebページの閲覧が音声等で視覚障害者にも使えるようになれば、いつでもどこでも必要な時に利用でき、その応用範囲は飛躍的に広がるものと期待されるのです。ある時は、音楽を聞くウォークマンに、ある時はテレビに、またある時は新聞記事を自由に読むことができる読書器になるわけです。

近視の人や老視の人がメガネを使うように、視覚障害者にとっては、その携帯性のゆえに、文字を読むための補助具となるのです。

次に携帯電話は、テレビカメラ機能やGPI機能を持つようになりました。これは、そばにあるいろいろなものを映し出したり、マクロの目で一定の範囲を映し出すなどまさに視覚そのものの機能を有するようになりました。

こうなると、携帯電話は、もはや単なる新聞の閲覧やショッピング等というようなコミュニケーションを円滑にするだけの道具だけではなく、視覚障害者の誘導・歩行支援のための道具としての可能性を広げて来たのです。この機能を使って、タクシー会社に電話をすれば現在自分のいるところにタクシーが来てくれたり、目的地を入力しておけば、カーナビのように音声で道案内してくれたりということも可能になるかもしれません。

また、赤外線通信機能の利用により、建物の入口や信号機の位置を確認したり、接近するバスの行き先情報を入取したりといったように、携帯電話を持つユーザー側の使い方によっていわば、トータル誘導支援機器となるのです。

4.視覚障害支援の可能性

今後SPコードや2次元バーコード読み上げ機能を利用すれば、1つ1つの商品情報や、各種の通知文書等も携帯電話を使って、その場で入取することができるようになります。

さらには、各種のクレジットカードやデビットカード・オレンジカードやバスカード等これらの機能を携帯電話に持たせてしまえば、いろいろな決済が携帯電話で行なえるようになるでしょう。

しかも、指紋や声紋等の認証等の技術を使って、個人認証のセキュリティーをより高いものにすることにより、不正な使用、例えば、盗難・紛失・偽造等の不正使用の危険性も少なくなり、そうなると、パスワードの入力等といったわずらわしい操作からも解放されることになるでしょう。

ついでに、光センサー機能やカラー表示機能もつけてしまえば、多くの電気製品の操作や自分の洋服のカラーコーディネート等もずっとよくなるでしょう。

それに、その用途によって別々の道具を使うといったわずらわしさもなくなるでしょう。また、これらを携帯型点字出力装置と繋ぐことによって、点字で読むことができ、視覚・聴覚の障害を合わせ持った人達にも全く同じように使うことができるようになるでしょう。

また音声認識技術を使って操作の全てを音声でできれば、上肢障害の人も使えることになるのです。今や、これらのことが夢物語ではなく、より現実に近いものになっているのです。

こう考えると、携帯電話の技術を視覚障害者にも利用できるようになれば、視覚障害者にとっての最大の情報障害である文字の読み書きの障害と移動の障害の多くが、携帯電話によって解決できる可能性があると大きく期待されるのです。まさに、視覚の代替機能を獲得することになるのです。

視覚障害者を始め多くの障害者にとって携帯電話は、もはや「電話機」という範疇をはるかに越えたいわば、トータルメディア機器ともいうべきものになります。

それは、肉体的な視覚器・聴覚器の限界、さらに時間と空間の制約を越えた全く別のセンサー(感覚器)であり、意志伝達ツールを得るということになるのです。

これらの技術を使えば、雇用問題を始め、日常生活上の多くの問題が解決され、障害者や高齢者等の社会参加が一層促進されることになり、様々な意味での経済効果も期待されることになるのです。

5.今後求められるものとは

1.アクセシビリティーの確保

2001年1月に施行された高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)の第8条(利用の機会等の格差是正)として、アクセシビリティの必要性が以下のように規定されています。

「高度情報通信ネットワーク社会の形成に当たっては、地理的な制約、年齢、身体的な条件その他の要因に基づく情報通信技術の利用の機会又は活用のための能力における格差が、高度情報通信ネットワーク社会の円滑かつ一体的な形成を著しく阻害するおそれがあることに鑑み、その是正が積極的に図られなければならない。」

「障害者、高齢者が利用しやすい案内標識、信号機等を交差点等に設置するとともに、携帯端末等を活用した歩行円滑化及び信号交差点における安全性の確保のためのシステムの開発・普及を推進する。また、障害者・高齢者が鉄道等の公共交通機関を容易に利用できるようにするための旅客サービス支援システムを開発する。」

「障害者・高齢者のための情報通信関連機器・システム、サービスの開発等障害者や高齢者が容易に利用できる情報通信関連機器・システム(パソコン等)、サービスの開発・普及等を促進するとともに、そうした機器・システム等を設置したバリアフリー型のITが利用できる施設の整備について補助を行う。また、障害者や高齢者が簡単にインターネット利用等をできるようにする技術等の研究開発や、障害者、高齢者にとってアクセシブルなウェブページの点検システムの開発を進めるとともに、行政をはじめとしてその利用・普及を積極的に促進するなど、情報バリアフリー化を推進する。」

これらのことを単なるうたい文句や努力目標に終わらせず、実現させるための努力と責任が今求められているのではないかと考えています。

2.各種操作におけるユーザビリティーの確保と当時者の積極的な参加

今後ますます各種の技術が開発され、これまで不可能であったものが可能になって来ると考えられます。その意味では、ITは、私達障害者にとっては「希望の技術」です。

しかし、それらの優れた技術を生かすためには、より高い操作性の確保が必須条件となります。IT技術を視覚障害者を始め、誰もが使えるようにして行くためには、技術の蓄積とより有効な操作性を確保するための様々なノウハウが必要になります。

今できるところから手がけて技術と様々なノウハウを積み重ね、より高いものえと成熟させて行く必要があります。その意味では、私達ユーザー側も、積極的に自分の意見をメーカー側に伝え、ともに作り上げて行く姿勢が必要になるのではないかと考えています。

そして、私達障害者に本当に使いやすいものを作り上げて行くためには、メーカーとユーザーがともに積極的に勉強し具体的な行動をして行かなければならないと考えています。

3.視覚障害者に対するより有効な情報提供手段の確立

今後様々な先進技術が開発されて来ると考えられますが、それを視覚障害者にどのような方法で情報提供するかが問題となります。

単純なテキスト情報を知る時には、従来のような音声読み上げ等でもそれほどの問題はありませんが、Windowsパソコンのような複雑な画面情報を読み上げたり、視覚障害者への誘導支援システムとして使う場合には、より有効な情報提供の方法の確率が必要になります。

すなわち、より簡単な操作とより直感的で分かりやすい情報提供のあり方の研究と技術の開発が必要になるのではないかと考えています。

6.おわりに

障害者を始め、誰もが使える製品を作ることは、新たな技術を必要とします。さらに、より分りやすく、より使いやすくするためには、人間の特性や障害の特性を理解することが必要不可欠なものとなります。

これらの技術は、さらに難しいものとなります。しかし、それによってもたらされる技術はまさに「人にやさしい技術」であり、より付加価値の高い技術ということにもなります。本来、技術は、人にやさしいものでなければなりません。特に情報通信技術は、人と人とのコミュニケーションを円滑にするためのものです。

もし、音声読み上げ機能をより質の高いものにするならば、その操作性をより高いものにするならば、それは視覚障害者のみならず、誰にとっても望まれるものになるのです。多くの方々のご尽力を心より祈念してやみません。

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