特集2 専門性向上への取り組み  視聴覚研究部 実践報告 学校紹介ビデオの制作 視聴覚研究部 横山俊光 亀山隆雄 鳥居秀和 1.視聴覚研究部が学校紹介ビデオの制作に取り組み始めるまでの経過  今より数年前、組織検討の話もまだない頃、教務係では社会啓発・教育相談・交流・各研修のオリエンテーション等に利用できる、簡単に盲特別支援学校を紹介するものを作ろうしていました。それは次の三つを作る企画でした。      1.学校案内パンフレット    2.教育相談ホームページ(入学相談・よろず相談含む)    3.学校紹介ビデオ  1・2については教務を中心に作業を進め、作ることが出来ました。学校案内パンフレットについては当時の山内修校長先生の要望もあり、2000年11月4日の創立110周年・横浜市移管50周年記念として、式典に間に合う形で発行することが出来ました。表紙には校舎からの眺望、ベイブリッジとランドマークタワー、そして、本校正門と新しくなったスクールバスで登校する生徒達が載りました。教育相談ホームページについては、本校のホームページはすでにできていましたが、全校で統一されたものはなく、各学部でバラバラにあったものを一つにまとめる必要がありました。これも進路指導部と情報研究部の協力を得ることにより作ることが出来ました。  そして、最後に残ったのが学校紹介ビデオの作成でした。過去には、人権教育推進委員会を中心に企画し外部に発注して作ってもらう案がでたり、また、視聴覚研究部でも試作品を作る試みは何度かありましたが、実現化はしませんでした。 2.今回の視聴覚研究部の取り組み 視聴覚研究部では本校の情報処理教育の充実に合わせ、視聴覚教材についてもデジタル化によって活用の方向を広めたいと考え、研修計画を立てました。まず、パソコンによるビデオ編集の技術を研修するため、編集用に特化した自作パソコンの制作を行いました。自作パソコンでは必要最低限のソフトウェアのみで構成することができるため、ハードディスクやメモリの負担を最小限度にとどめることができます。またビデオ編集専用ハードウェア(canopus社「eazyDV」)を組み込みDV(デジタルビデオ)カメラから直接取り込んだ画像を編集し、またビデオに書き戻す作業ができるようになりました。幸い本校では数年前よりDVカメラが撮影の主流となっており、ほとんどの学校行事がDV化されています。そこで、現存する様々な行事などの映像素材を中心に編集し再構成することで「学校紹介ビデオ」が試作できるのではないかと考えてみました。  従来の学校紹介ビデオの企画の発想では、まず企画を検討し予算化、スタッフを決定し脚本・コンテの作成、撮影、編集と多くの準備ステップを踏まざるを得ず、大変な労力が予想されました。しかし、今すでにある素材を使って、とりあえず「パイロット版」を作成することで、まず「形」を作って提示し、それをもとに具体的に検討に入れば、制作への筋道が見えると考えたわけです。  制作に当たっては、いくつかの共通理解を図りました。  ───────────────────────────────────────  学校紹介ビデオの制作にあたって視聴覚研究部で確認したこと (1)制作のねらい @ 学校紹介ビデオのニーズについて a.センター化構想が進む中、地域や他の関係諸機関、他地区の盲特別支援学校との連携を進める上で、簡単な概要紹介をする機会が増えてくると思われる。 b.学校間交流・居住地交流教育の中で、相手校の児童生徒に対する啓発用の教材として利用する。 c.各学部・科の入学相談時にオリエンテーション用として利用する。 d.市初任研・介護体験・学校見学者などにオリエンテーション用として利用する。 e.卒業後の進路先・進学先に対し、紹介し啓発するために利用する。 A 以前制作された学校紹介ビデオについて 次の2種類がある  a.市教委制作「視覚障害者は今」     45分  b.横浜市立盲特別支援学校制作「横浜市立盲特別支援学校」 30分 *どちらも制作されてから15年近く経ち、学校の様子もまた視覚障害者を取り巻く環境も大きく変わっているため、そのままではニーズに応えられなくなっている。 *30分を超えるため、気軽に見るには適さない。 *小学校高学年の子供レベルでは少し内容が難しく感じられるところもあり、飽きてしまうことも考えられる。 *保存状態が十分でなく、すでにテープの劣化が始まっている。 B デジタル化の構想について  現在Webページの作成に伴い、情報のデジタル化が一般化されてきている。今回新たな学校紹介ビデオを制作するにあたっては、将来的なデジタルコンテンツとしての活用を念頭に置く必要がある。すなわち、単にビデオを配布して見てもらうという利用にとどまらず、DVD−ROMによるインタラクティブ(双方向)な利用や、Webページ上での活用などが考えられる。デジタルビデオを使って学校紹介ビデオを作っておけば映像素材として今後も各方面で活用できる。 (2)基本構想 @ 制作母体  企画の中心になるのは教務であるが、その技術の専門性や用途から考えると、視聴覚研究部または視聴覚研究部を中心とした新組織が、その実制作にあたることになる。ただし、全校的なプロジェクトチームを作ることは、会議の精選や組織の簡素化という昨今の本校の情勢から好ましいものではないので、既存の組織の中で可能な限り取り組んでいくのが望ましい。 A 内容  ニーズは多様であり、また、盲特別支援学校や視覚障害者を取り巻く環境も多様化している中で、すべての内容を過不足なく総合的・網羅的に扱うことはかなり無理が生じる。またランタイムが長くなることは、それだけ技術的に困難が伴い、退屈させずに見てもらうためにはかなり専門的な技術を要するので、校内でのスタッフでは無理である。  そこでいくつかのカテゴリーに分け、まずは学校全体の概要についての短い作品を制作し、必要に応じて順次内容を継ぎ足していくという方法がふさわしいと考えた。すなわち、「学校紹介」以下「点字指導」「歩行訓練」「自立活動」「学校行事」「学部紹介」「臨床」「進路」等、各パートは5〜10分以下にまとめ、随時作成していく。これらをデジタルビデオの頭出し機能や、DVD‐ROMのファイルとして扱うことで、必要な内容だけ取り出してみることができるようにする。作成にあたっては学部・科・教科・分掌・研究部その他で必要に応じ企画し、随時更新できるようにする。 B 「学校紹介」  教務の企画で作成する。基本的には盲特別支援学校の概要を一般の小中学生に紹介するというスタンスでいきたい。交流教育や小中学生の入学相談に対応できるように考えた。  「盲特別支援学校のロケーション」「学部・科の構成」「授業風景」「点字」「歩行」「コンピュータ」「臨床」「行事の紹介」などで構成し約15分でまとめたい。 C その他のカテゴリー  学校紹介編での内容に、さらに詳しく紹介したいカテゴリーを取り上げ、随時制作していく。関係の学部・科、教科、分掌、研究部で企画したものを視聴覚に提案、基本的には企画した部署による原案作成、シナリオ等の検討を経て、撮影・編集等の実作にあたっては視聴覚研究部との共同作業とする。 (3)制作手順 @ コンセプトの確認   ニーズを確認し、基本となるコンセプトを作る。特に、見てもらう対象を明らかにする。また、基本的な内容、特に重点として取り上げたい事柄を確認しておくとともに、全体の雰囲気を決めておく。 A プロットの作成   おおむねのランタイムを決める。その中で内容の基本構成を考え、時間配分や必要な場面などを挙げてみる。コンセプトに沿って発想されているか、説明や描写に工夫が必要なところはどこかなどを考える。 B 脚本原案   プロットに沿ってシーンを組み立て、必要なナレーションを入れてみる。映像と音声のバランスが適切か、必要な情報が伝えられるかなどを考える。 C 映像素材の収集   日常の生活の様子を撮影する。必要な場面を演出しながら撮影する。施設や器具などの撮影をする。  行事などの記録をそのまま、あるいは加工して使う。説明や解説のための撮影をする。 D 仮編集   脚本原案に沿って仮編集をする。必要な素材がそろっているか確認。必要に応じ撮りなおしや脚本の変更も検討する。 E 脚本完成  ・正式な脚本を作る。ナレーシ∃ン原稿をそろえ、必要なランタイムを計る。 F 編集  ・脚本に沿って編集をする。ナレーションとランタイムを合わせる。映像効果を加える。試写を行い、コンセプトに合っているかを確認する。 G タイトル  ・タイトル(メイン・スタッフ・キャスト等)をタイトラーで加える。 H アフレコ  ・ナレーションは別に録音し,編集後の画面にアフレコで入れる。音楽、効果音も加える。 I 完成試写 (4)配慮事項 ・制作にあたっては公共の利用に基づく諸条件に鑑み、必要な配慮をする。 @ 内容が主観的になっていないか ・児童・生徒に対する思いを客観的に伝えられるように心がける。 ・脚本の作成にあたっては必ず複数の職員で検討を進める。 A 社会的なニーズに応えているか ・各方面でのニーズを十分に考慮し、将来的な活用の方向も含めて積極的に利用を図れる内容にする。 ・複数の部所で企画を進める場合は、相互の連携をしっかり取り合って準備にあたる。 ・盲特別支援学校の特色については、それぞれについて専門性が求められるので、企画にあたっては、総合性と専門性のバランスを考えて制作にあたる。 B 表現が適切か ・一方的な表現や感情的な表現は避ける。 ・将来に対する見通しなどは、憶測ではなく、客観的な資料に基づき提示する。 C 取材や撮影にあたっては人権上の配慮がなされているか ・生徒個人を取り上げて主役とすることは避ける。 ・撮影にあたっては肖像権に配慮し、必要に応じて撮影許可を受ける。 ・公開の場での客観的な記録映像については、被写体となる生徒の許可をとることなく転用できるものとするが、完成試写の段階で登場人物全員の承認をとる。 ──────────────────────────────────────  3. 編集・撮影の実際にあたって  当初の構想では映像素材として「行事の記録」「旧作からの映像の転用」を中心に考えていましたが、実際に編集作業を進めるうちに、多くの場面で追加撮影が必要になってきました。特に日常生活場面をとらえた映像素材がほとんどない、あっても人物中心の構図がほとんどで説明的な場面(何をしているところなのかがわかるような全体の描写)がないものが多く、編集しても場面としてうまくつながらないことが多かったです。また、旧作の映像は画質があまりにも違いすぎ、つなげると大いに違和感がありました。脚本の基本を変えることなくまとまった形のものにするため、新たに追加撮影を行う必要が出てきました。  視聴覚研究部では、各学部・科でそれぞれ企画の意図を説明し、必要に応じて撮影の協力を仰ぎ、ほとんどのシーンを追加撮影しました。またこの段階から「パイロット版」としながらも、作品の完成度によっては「初号作品」として公開できるものになるのではないかと検討してきました。  撮影に当たっては@「実際の授業をそのまま撮影したもの」、A「授業ではあるが、ある程度撮影者によって演出を加えたもの」、B「出演者を依頼し演出のもとに撮影したもの」などがあります。幼稚部・小学部の様子は@、情報処理の授業などはA、図書室の紹介や登校の様子はBにあたります。また、専攻科の授業(解剖学、臨床)の様子は、実際の学生ではなく、教職員が学生役で出演し、模擬授業の形で撮影をしました。この場面では多くの職員が参加し、和気藹々とした楽しい撮影になりました。  編集上で工夫した点は、いかに盲特別支援学校の全体を過不足なく紹介するか、というところでした。オープニングには運動会の様子が紹介されます。これは視聴対象の小学校高学年の子どもにとって興味を引く導入としたかったからです。ほとんどの晴眼者にとって、視覚障害のある子どもたちが運動会で元気に走ったり踊ったりする姿を想像することはきわめて難しいことでしょう。これから「盲特別支援学校」についてのビデオを見る、という気持ちで見始めた子どもたちにとって、「自分たちと同じように運動会で元気に走っている」盲特別支援学校の子どもたちの姿を紹介することは、きっと大きなインパクトとなると考えたからです。さらにこの短いシーンをよく見ると、先生の伴走で走る姿や、円周走、音源走といった盲特別支援学校独自の競技に気が付くこともできると思います。  また、盲特別支援学校の生活の中で欠かせない「音」を各シーンの象徴として取り扱いました。点字を打つパーキンスの音、音声信号の音、白杖で道をたたく音、パソコンの合成音声など、視覚障害者と音との関わりがいかに大切かを感じてもらえたらと思います。幼稚部の生活を紹介する場面では、たまたま子どもが即興で弾いていたピアノの音を使いました。子どもたちの楽しい表情と合わさっておもしろい画面効果になっていると思います。  短い時間の中で紹介しきれなかった「行事」「スポーツ」などは、エンディング近くに短いショットの積み重ねで映像として納めました。文化祭のステージ、スキー、フロアバレーボールなど、一瞬のショットですが、ここにもオープニング同様「見る側の発見」を期待したいところです。  今回撮影、収集した映像はのべ30時間分くらいありました。ほとんどが行事の記録であり、今回のビデオに紹介しきれない場面もたくさんありました。膨大な映像の中からの編集作業はかなり大変でしたが、パソコンによる編集は従来のビデオ編集システムよりはるかに作業性が優れ、またダビングによる画質の劣化がないという特性のため、いたって軽快に作業ができました。今後、記録映像素材は撮影後早いうちにデジタル化をし、ハードディスクに保存しておくことが重要であると考えます。  編集後の音楽、ナレーション入れ、タイトルテロップ作成を終え、2004年5月、いわゆる「0号」が完成しました。当初企画の完成予定から1年以上の遅れ、足かけ2年がかかってしまいましたが、全体教研での発表に間に合わせることができました。またこの段階で、全体教研での意見をもとに再編集をし、完成版とすることが視聴覚研究部で確認されました。 4.'04年6月の全体教研での発表から現在までの経過 全体教研での発表(完成試写会)の時にとったアンケートには、たくさんの意見や指摘がありました。それを代表の亀山先生が整理しまとめてくれて、鳥居先生と再編集(指摘箇所の修正)をしてくれました。 ──────────────────────────────────────  9月の視聴覚研究部で確認したこと (1)修正したところ @タイトル字幕横にはみ出していた → 画面に納まる Aナレーションと画面のずれ → 調整  (図書館) 手で見る絵本、拡大本、拡大読書器  (臨床室) 地域の方も  (専攻科) 最新式の機械を使った  (入学式) 満開の桜に迎えられて B画面の差し替え  (点字)  ナレーションも調整  (入学式) 斎藤先生 カット C画像の調整  (図書室) 映像のなかで一瞬別の画像が入る(カセットテープの時 手で見る絵本の顔が写る) 1フレーム(画像)削除 DBGMを調整 歩行訓練から幼稚部になる直前音楽切れ E原音、ナレーション、BGMのバランス調整 白杖での登校から校内歩行訓練に変わるときのBGMと原音 その他 (2)修正しなかったところ @ナレーション(浅水十明先生)西洋医学  学校要覧で「西洋医学の講義を開始」と紹介されているのでこのままとする。 Aテロップは入れない 画面に集中してもらうためわざと入れなかった。それに引きずられてしまうし、入れると説明や解説が多くなり、きりがなくなる。 (3)その他  編集方針は、おおざっばに概要をつかんでもらうことにある。解説や説明はこのビデオ内容の補足資料を作るとか、一般校の児童等にビデオを見せる前か見ながら先生に説明してもらうと良いと思う。点字、白杖のビデオを別に作ったほうが良いのではないか。今回は自主的に視聴覚研究部で作ることになったが、今後、基本的には各部署(関係の学部・科、教科、分掌、研究部)で企画したものを視聴覚に提案する。各部署による原案作成、シナリオ等の検討を経て、撮影・編集等の実作にあたっては視聴覚研との共同作業とする。 ──────────────────────────────────────  再編集された時点で、依頼主である教務に、このビデオの今後のあつかいは任されましたが教務で検討した結果、新組織にもなり、教育センター化部門の啓発地域連携部に任せるのが順当であろうという結論になりました。以後、11月の職員会議で再編集されたビデオを全職員に見てもらい、保護者には11月25日の家庭教育学級の後に上映会をし、見てもらいました。12月に入り、ビデオに登場している幼児児童生徒及び保護者に啓発地域連携部より登場することをお願いする文書が配布されました。そして返信にカットしてほしいと要望があった箇所(1箇所)や職員から出ていた意見要望箇所(職員の歩行研修にテロップを入れる等)を最終修正し編集し直しました。この最終編集の際にはビデオ編集のプロと噂の聞いている酒井先生にお願いし、快く協力していただきました。ありがとうございました。現在、登場している生徒の最終チェックをしているところですが、この学校紹介ビデオが完成するまでたくさんの方々が制作に携わり、協力していただきました。皆さんに感謝しつつ、今年の4月、晴れてこの学校紹介ビデオが色々な場面で活用されることを期待し、ここで報告を終わらせていただきます。