特集2 専門性向上への取り組み  情報研究部 実践報告 盲特別支援学校における情報教育の意義と活用マニュアルの作成 情報教育研究部 新城直 長尾一  1989年(平成元年)に本校に当時の教科外研の一組織として「情報処理研究部」が発足されました。これを発足させたのは、当時視覚障害者のパソコン利用が始められ、その技術を身に付けることで、普通文字の読み書きが可能になることが予感されたこと、また点字においても、パソコンを使うことで点字教材が作り易くなると考えられたからです。それから約15年が経過しました。この間、パソコンの低価格化や携帯電話・インターネット等の出現・普及によって視覚障害者のコミュニケーション手段が飛躍的に広がり、今やパソコン等の情報機器がなければ、社会生活を営む上で多くの支障を来すまでになっています。視覚障害者は情報障害者であると言われるだけに、これらICT(情報通信技術)は、視覚障害者にとっては、不可能を可能にする希望の技術であると言われる所以です。  しかし、ICTを活用するためには、障害があることで様々なバリアが山積みしているのも事実であり、また、これらが新たなバリア(いわゆるデジタルデバイドと言われる問題)や犯罪などに悪用されたり、巻き込まれたり、あるいは、有害情報の氾濫等といった負の生産物を産み出す危険性を持っていることも認識していなければなりません。  今、私達は、「高度情報通信ネットワーク社会」に入りつつあります。ともすれば、ICTとかコンピュータという言葉のひびきや、インターネットにおける匿名性あるいは、相手が見えない等の理由で「人間性」を忘れがちになります。しかし、ネットワークは、「人間のネットワークであり、そこには、血のかよった人間がいることを忘れてはなりません。したがって、ICTならびにあらゆるネットワークは、人間性にあふれた、まさに人にやさしいものでなければならないのです。  このようなことから、現在では、情報の受発信の技術を単に身につけさせるだけではなく、情報にアクセスする際のモラルやルールを含めて身につけておく必要があるのです。これが「情報教育の意義」であり、名称を「情報教育研究部」と変えた理由でもあります。  障害者のこれら情報アクセスへの保障は、1993年の障害者基本法や国連・障害者の機会均等に関する基準規則でも世界的な理念として確認され、まさに「情報アクセス、情報発信は現代の基本的人権」とも言えるものなのです。それは障害者だけでなく、高齢者をはじめ、すべての人のために不可欠な権利となっているのです。  総務省は、平成14年12月から、ICTが高齢者、障害者も含め誰にとっても一層使いやすくなり、活用されるようになるための方策を検討するため、高齢者・障害者当事者、関連企業、学識経験者等から構成される「高齢者・障害者によるICT活用の推進に関する研究会」(ICTユニバーサル研)(座長:高橋立教大学コミュニティ福祉学部教授)を開催し、その報告書が取りまとめられました。  総務省では、本報告書を踏まえ、高齢者、障害者を含めた誰もがICTを主体的に利用でき、その利用機会を通じて個々の能力を最大限に発揮することが可能となる社会(ICTユニバーサル社会)の実現に向けた施策を積極的に推進していくこととしています。  文部科学省においては、次のように政策目標を掲げています。  「高度情報通信ネットワーク社会が進展していく中で、子どもたちが、コンピュータやインターネットを活用し、情報社会に主体的に対応できる「情報活用能力」を育成することは非常に重要です。  こうした情報活用能力の一層の充実を図るために、新しい教育課程では、  1.小・中・高と各学校段階を通じて、各教科等や「総合的な学習の時間」においてコンピュータやインターネットの積極的な活用を図るとともに、  2.中・高等学校において、情報に関する教科・内容を必修としています。  また、各教科等の授業の中で、先生がプレゼンテーションしたり、子どもたちがコンピュータやインターネットで調べたり、交流したりすることによって、「わかる授業」や「魅力ある授業」の実現に役立てていきます。  こうした、情報化に対応した教育を実現するため、IT戦略本部が策定した「e-Japan重点計画」等に基づき、「2005年度までに、すべての小中高等学校等が各学級の授業においてコンピュータを活用できる環境を整備する」ことを目標に、教育用コンピュータの整備やインターネットへの接続、教員研修の充実、教育用コンテンツの開発・普及、教育情報ナショナルセンター機能の充実などを推進しています。  子供たちに、IT教育を実施していくためには、教員がITを活用して指導ができる能力を修得することが不可欠である。公立学校におけるコンピュータの操作が可能な教員の割合は、平成11年度の66.1%が、14年度には87.6%となっている。また、コンピュータを利用して教科指導を行うことが可能な教員は、平成11年度の31.8%が、14年度には52.8%になっている。  このような中にあって、本校教職員のITを活用しての指導力向上のため、各種ソフトウエアのマニュアル整備が急務となりました。  また、以前から新しいソフトウエアが導入される度に、研究部でマニュアルを作成し、講習会を開き、操作方法等の伝達を行ってきました。毎年、新転任オリエンテーションにおいても同様の伝達を行い、教材や資料作成に困らないようにしてきましたが、各ソフトウエアごとのマニュアルであったため、職員の異動等に伴い、いつしか散逸してしまうのではという危惧と本校教職員はもとより、生徒・保護者や外部の方へも配布し、広く盲特別支援学校の情報教育について知っていただこうという意図もあり、マニュアルの整備に着手しました。  最初は、ソフトウエアごとのマニュアルを見直し、バージョンアップ等で追加された機能を加筆修正することから始めました。しかし、大幅な改良が施されたものは、全面改訂が必要なものもあり、作業は遅々として進みませんでした。  構成を考える上で、単なる操作方法のマニュアルにとどめるのではなく、情報機器使用のモラル向上にもつながるよう、各方面からの情報集めに時間をかけ取捨選択し、引用したこともあり、マニュアルの完成まで約1年を費やしました。  こうして完成したマニュアルは、2003年度の情報教育研究部の全員の協力・分担によって作られた文字通り手作りのマニュアルです。これまでの経験とノウハウ、そして本校教職員の資質向上に必要な情報が凝縮されたものと言っても過言ではありません。  「横盲教育」にマニュアルの内容を全て掲載できればいいのですが、50ページを越えるもので紙面上の都合もあり、以下に、マニュアルの目次と奥付のみを付します。各内容については、薄緑色の冊子『横盲情報教育のすべて2004 必携 情報教育マニュアル』または、校内ネットワーク上の「横盲情報教育のすべて2004」のフォルダ内をご参照ください。 【目次】 発刊に当たって…………………………………………………………………………………… 1 第1章 横浜市立盲特別支援学校 情報機器使用のガイドライン…………………………………… 3  はじめに   【禁止事項】   【犯罪行為】  1.基本方針について  2.校内LANのウイルス対策について  3.学校LANについて  (1)IPアドレスを固定する  (2)ユーザー設定・グループ名を設定する  (3)メールを送受信する  (4)ネットワークプリンタで印刷する  (5)ソフトウェアをインストールする  (6)使用の際のルールを確認する  (7)実験運用をする   【参考資料1】   横浜市教育委員会ガイドライン  (教育用コンピュータYYネットへの接続) 第2章 Windowsの基本操作…………………………………………………………………8  1.Windowsの起動と終了  (1)Windowsの特徴とは  (2)Windowsを起動する  (3)Windowsを終了する  2.メニューの操作について  (1)メニューの階層構造とは  (2)スタートメニューとは  (3)メニューバーとは  3.アクティブウインドウの切り替えについて  4.パソコンが動かなくなってしまった時の対処方法について  5.ネットワークへの接続について   【参考資料2】   これだけは覚えてほしいキー操作一覧   【参考資料3】   全盲・弱視の個別の設定   【参考資料4】   弱視者の設定 第3章 点字編集ソフト「Win-BES」の操作方法…………………………………………14  1.Win-BESを使うには?  2.Win-BESの画面について  3.Win-BESの操作方法について  (1)文字を入力する  (2)かな表示にする  (3)ローマ字で入力する  (4)点字印刷をする  (5)文書を保存する  (6)墨字プリンターで印刷する  (7)作業を終了する  4.トラブルの対処方法について  (1)Win-BESからファイルを開こうとした時  (2)作成したファイルの書式を変更する時  (3)1ページにおさまらずミシン目の上などにも点字が印刷される時  (4)印刷をクリックしても点字印刷が始まらない時  (5)意味不明の点字が印刷される時  5.Win-BESの様々な機能について  (1)作図をする  (2)テキストファイルを使う  (3)点字ディスプレイを使う   【参考資料5】   音声化について 第4章 Windowsのキーボード操作「ショートカットキーを使う」……………………20  1.クリップボードについて  (1)複写・切り取り・貼り付けをする  (2)文字列やファイルなどを範囲選択する  2.マイコンピュータとエクスプローラについて  (1)エクスプローラーを起動する  (2)リストビューとツリービューを切り替える  (3)フォルダの中身を見る  (4)ウィンドウの内容を更新する  (5)親フォルダに移る  (6)名前を変更する  (7)プロパティを見る  (8)削除する  (9)ショートカットを作る  3.スタートメニューについて  (1)スタートメニューを開く  (2)スタートメニューから項目を選ぶ  (3)スタートメニューにショートカットを追加する  (4)ショートカットを削除する  (5)スタートメニューを閉じる  4.デスクトッブについて  (1)デスクトップ上のショートカットアイコンに焦点を合わせる  (2)ショートカットアイコンをデスクトップ上に作る  (3)ショートカットアイコンの名前を変更する  (4)ショートカットアイコンを削除する  5.アプリケーションウィンドウについて  (1)アプリケーションウィンドウのコントロールメニューを使う  (2)アプリケーションウィンドウを閉じる  6.ドキュメントウィンドウについて  (1)ドキュメントウィンドウのコントロールメニューを開く  (2)1つのアプリケーションを別のドキュメントに切り替える  (3)ドキュメントウィンドウを閉じる  7.ダイアログボックスについて  (1)タブを移動する  8.メニューについて  (1)メニューバーに焦点を合わせる  (2)メニューバーの項目間を移動する  (3)プルダウンメニューを開く  (4)プルダウンメニューから項目を選択する  (5)カスケードメニューを開く  (6)メニューをキャンセルする  9.コントロールメニューについて  (1)アプリケーションウィンドウのコントロールメニューを開く  (2)ドキュメントウィンドウのコントロールメニューを開く  (3)コントロールメニューから項目を選択する  10.コンテキストメニューについて  (1)コンテキストメニューを開く  (2)コンテキストメニューから項目を選択する  11.起動しているアプリケーションの切り替えについて  (1)起動しているアプリケーションを切り替える  12.ごみ箱について  (1)削除したファイルやフォルダを元に戻す  (2)ゴミ箱を空にする  13.MS-DOSプロンプトについて  (1)MS-DOSプロンプトを開く  (2)フルスクリーンと小さいウィンドウを切り替える  (3)MS-DOSプロンプトを閉じる  (4)DOSプロンプトと他のアプリケーションとを切り替える  14.タスクバーについて  (1)タスクバーのアプリケーションボタンに焦点を合わせる  (2)タスクバーのコントロールメニューを開く  (3)タスクバーのコンテキストメニューを開く  (4)全てのウィンドウを最小化する 第5章 VDM100Wとその関連ソフトの読み上げ操作方法……………………………… 31  1.VDM100Wについて  2.VDM100Wの読み上げ制御コマンド及び各種設定メニューについて  (1)VDM100Wの動作に関する各種の設定や変更をする  (2)VDM100Wの読み上げ制御コマンドを使う  3.Internet Explorerの読み上げ制御コマンドについて  (1)Internet Explorer 標準のコマンドを使う  (2)読み上げ制御コマンドを使う  4.KTOS(点字入力用ドライバ)の操作方法について  (1)KTOSの起動や終了をする  (2)文字モードを切り替える  (3)点字入力とフルキー入力を切り替える  5.MYEDITUの読み上げコマンドについて  6.Word音声ガイド・読み上げ制御コマンドについて  7.Excel音声ガイド・読み上げ制御コマンドについて  (1)アクティブセルの移動や読み上げをする  (2)Excelでの読み上げコマンド一覧を見る 第6章 ワープロソフト 「Word 2002」の操作方法……………………………………40  1.Word 2002を起動する  2.ファイルを開く  3.文字列を入力する  4.ファイルを保存する  5.Word 2002を終了する   【参考資料6】   基本的なショートカットキー 第7章 表計算ソフト 「Excel」の操作方法………………………………………… 51  1.Excelとは  2.Excelの操作方法について  (1)Excelを起動する  (2)サンプルデータを読み込む  (3)セルへデータを入力する  (4)ファイルを保存する  (5)新しいファイルを作成する  (6)表を作る  (7)数式を入力する  (8)文字列の配置を変更する  (9)罫線を設定する  (10)セル幅を変更する  (11)タイトルをつける  (12)ファイルに名前をつけて保存する  (13)Excelを終了する  3.マウスを使わない操作方法について  (1)入力や編集する  (2)印刷する  (3)ファイルを操作する  (4)ワークシートの挿入やグラフを作成する  (5)数式や関数を入力する  (6)書式を設定する  (7)範囲を選択する  (8)移動や切り替えをする 【奥付】 │ │ │ │ │「横盲情報教育のすべて 2004」 │ │ │  〜必携 情報教育マニュアル〜 │ │ │ │ │ │■ │ │ │2004年3月31日 初版第1刷発行 │ │ │ │ │編集・担当│新城 直・白岩康平・橋本 剛・村上さゆり・杉山節子 │ │ │松田基章・田本真志・阿部伸男・梅澤 満・長尾 一 │ │編集責任者│長尾 一 │ │発行責任者│新城 直 │ │発   行│横浜市立盲特別支援学校 専門研究 情報教育 │ │ │〒221-0005 横浜市神奈川区松見町1−26 │ │ │TEL 045-431-1629 FAX 045-423-0284 │ │Webページ │http://www.edu.city.yokohama.jp/ss/yokomou/ │ │表紙デザイン│村上さゆり │ │印   刷│成蹊堂印刷 │ │ │Printed in Japan │ 今後、このマニュアルが本校の教職員を始め、より多くの人達に活用され、本校の児童・生徒はもちろん、県内のより多くの視覚障害者にICTが利用できるようになり、 しいては、視覚障害者の社会参加がより一層進められることを心より願ってやみません。