特集2 専門性向上への取り組み  重複障害研究部 実践報告 PT・OT研修、リハ科検診の取り組み 重複障害研究部 大野みさよ 鈴木千枝子 1.はじめに  本校の重複障害研究部は、主に知的な障害を併せ持つ者を対象の研究部であったが、肢体不自由児が多く在籍するようになってきて、平成6年に肢体不自由研究部がつくられた。現在では組織改編により重複障害研究部に吸収され、肢体不自由を含む研究会となっている。肢体不自由研究部より引き継いだ業務としては、  @理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、リハ科検診の計画と対応  A訓練機器の管理(現在は主に体育館のギャラリーにおいている)と予算請求  B「運動発達遅滞・肢体不自由幼児児童生徒の概要」の作成 を行っている。また、肢体不自由を含む種々の障害を併せ持つ者の事例検討を行っている。 肢体不自由部門でいうと、当初は重度の麻痺のある者が対象と思われていたが、歩行困難なほどではないが、軽度の麻痺がある幼児・児童・生徒も多く、リハビリテーション科の臨床指導医や理学療法士(PT)、作業療法士(OT)の指導を受けることで、日常生活動作において、大いに恩恵を受け、知識技術の向上に役立っている。  今後の課題としては、現在は幼稚部にのみ在籍している医療的ケアを含む者も、対象に広げていくことである。 2.平成16年度の研究テーマ  「一人ひとりの障害の状態や発達段階に応じた指導についての研修」 3.平成16年度 研修内容及び年間計画  ・事例を通した、子どもの理解と指導の研修  ・一人ひとりの障害の状態や発達段階に応じた指導について、理学療法士・作業療法士等から研修を受ける。 《年間計画予定》 4月 テーマ、係分担の決定 5月 「運動発達遅滞・肢体不自由幼児児童生徒概要」作成と内容理解 PT受診と研修 5月25日 9月7日 12月8日 2月4日 OT受診と研修   5月13日 6月10日 10月22日 11月25日 リハ科検診   6月18日 11月19日 職員研修 「自閉症の方の理解と関わり」 1月 活動のまとめと年間反省 4.16年度 校内での研究発表内容 (1)PT研修  PT(理学療法士:Phisical Therapist)とは、 運動発達に基づく姿勢保持能力および移動能力の獲得を支援する専門家。 基本的運動動作能力の獲得を図ることを主目的としている。 PTに対して教師たちが期待する事柄(学校におけるPTの主な役割) @姿勢・運動発達の見方および指導について ポジショニング・シーティング 運動発達の評価と運動発達を促す運動プログラムへの助言指導 立位・歩行訓練 A異常発達の評価と指導について 変形・拘縮 関節可動域訓練・リラクゼーションの指導 呼吸・排痰 B器具・装具について  ◎幼稚部 乳幼児の研修例 うつ伏せ姿勢は手膝這い運動につながるので多くとらせる。 こどもにとってうつ伏せを不安な姿勢と感じ、嫌がる子もいるが、遊びの中で、できるだけ多く取り入れるとよい。 手膝這い運動は将来 ・白状を持ってリズミカルに歩く力につながる。 ・低緊張児には安定して長く歩く力につながる。 ・手、腕の巧緻性が高まり、手首を自由に動かせるようになる。  ◎小学部 片麻痺がある児童の研修例  将来、成長期にハムストリングが短縮しないように大臀筋、中臀筋を強化することが大切。音楽に合わせたリズム体操などで横にステップしたり、後ろ歩きをしたりして楽しく体を動かす中で行うとよい。  教育の中で行う機能訓練的な内容は、遊びの中にとり入れるなど楽しく行えるように配慮して行うことが大切である。  ◎普通科 生徒の研修例 ○ポジショニング・シーティングについて  すべり座位は、一定の腹圧を保てなくて仙骨で支えてしまっているということが分かった。背中下部を刺激することで上体を起こし、足の裏に体重がかかるようになると食事・作業等に有効な姿勢がとれる。  変形・拘縮の予防のためのストレッチやマッサージの研修。 (2)OT研修  OT(作業療法士 Occupational Therapist)とは、  基本的な姿勢・運動能力をベースに学習および生活場面で作業活動を通してさまざまな機能(身体的・知的・精神的)に働きかける専門家。  能動的な活動を通して個々のQOL(生活に生かされること、豊かな生活に向けて)を促すことが大きな目標である。 OTに対して教師たちが期待する事柄(学校におけるOTの役割) @操作性を高める指導について 目的を持った手の使い方・手の活動をどのように促すか。 A生活場面におけるポジショニングをどのように促すか。 学習場面・食事場面における姿勢のあり方。 排泄・着脱の指導 自助具の利用・活用 B自発的な活動を促す指導 できることを伸ばす指導  ◎幼稚部 乳幼児の研修例 ○スプーン、はしの練習について  スプーン、はしを持つ練習をするのに、それまでに必要な手の動きなど、身につけていかねばならないことへの助言、指導を受けた。  ◎小学部 児童の研修例 ○上履きをはく動作について  台の上に片足をのせてくつをはくことは、手や目で意識できるという点でよい。日々の積み重ね、パターンの定着、指導の継続性を考えると、家庭との協力があるとよい。  ◎中学部 空間認知が十分でない全盲児の研修例 ○机の上をぞうきんできちんと全部ふけない・鞄にファイルを正しい方向で入れられないなどについて  空間をイメージするのが未形成なので、イメージを作るために、体をきちんと固定させて(キャスター付きの板に腹這いになって乗るなどする)、右回り、左回り、前進、後進など移動の訓練をする。また膝這いになり、手や足を水平方向に伸ばしてボディイメージを作ると良い。ぞうきんがけも空間認知が不十分なためであるが、拭いているところが面としてつながっていないので、細かく手順や手がかりを教える必要がある。ファイル入れも同様である。  アドバイスを受け、日々の課題学習の中で取り上げて重点的に行っている。 (3)リハビリテーション検診について  盲特別支援学校に肢体不自由の幼児・児童・生徒の在籍があることから、平成5年度より、横浜市養護教育総合センターから、リハビリテーション科臨床指導医の盲特別支援学校への派遣が始まり、リハビリテーション科の医師によるリハビリテーション科検診が年2回行われることとなった。当初は、盲特別支援学校では、教師たちにリハビリテーションに関する知識の蓄積がなく、「この子に良かれと思ってしていることが、これでいいのか?もっと本人に望ましい訓練のやり方があるのではないか?」という職員の悩みから始まったものである。@リハ科の医師による関節可動域や運動制限に関する医学情報を得る A個々の訓練目標の設定についての相談 B個別の機能訓練、学校生活の中での具体化についての相談 C教員の指導、望ましい介助の方法についての相談を趣旨に実施された。  平成16年度現在でも、同様に年2回実施し、1回に7〜8名を対象にリハビリテーション科検診が行われている。  @ 盲特別支援学校における「リハビリテーション検診」の目的 ○リハビリテーション科の医師による検診(療育):専門医による検診であり、専門的な立場から教育現場にアドバイスを受けることができる。教員は保護者を通して主治医の指示を聞いているが、専門医のアドバイスにより理解が深まり、よりよい支援を行うことができる。 ○専門医へ受診の必要の有無をアドバイス:明らかな機能・形態の障害はみられないが、動作や姿勢などに心配なことがあるときに検診を受け、本人の特性の範囲なのか、何らかの医療が必要なものなのかを判断してもらい、必要によっては医療機関への紹介等助言を受けることができる(紹介状の発行等)。 ○装具・車椅子・机等に関するアドバイス:リハビリテーション科医師が教室など実際の活動場所に出向き、机・車椅子など、学校生活の様子を見た上でのアドバイスを受けることができる。 ○保護者にとってのセカンドオピニオン的存在となりうる:主治医から勧められた治療内容が本人にとってどのような効果があるのか、また、本人の状態等、保護者が主治医とは別の専門医に相談する機会となる。  A 盲特別支援学校でのリハビリテーション検診の実際 ○問診:主に保護者、担任からの相談。保護者のみ、担任のみの場合もある。 ○診察:動きなどの診察、打診、歩行のチェックなど、幼児児童生徒とコミュニケーションをとりながら行ってくれる。 ○アドバイス:保護者、担任等。 ○装具や車椅子のチェック:靴、中敷など。 (4)職員研修  平成15・16年度は、外部より講師を招き、「自閉症」をテーマに中普合同研修会と共催で行い、中学部・高等部普通科以外の学部にも広く参加を呼びかけることとなった。実際の講義については下記の通りである。主な内容については、講義資料から抜粋した。研修後はアンケートを実施した。 ◎平成15年度 テーマ:「自閉症の基礎知識」 講師:湘南病院精神科 南 達哉先生 主な内容:自閉症の特徴について @対人的相互反応の質的障害 Aコミュニケーションの質的障害 B行動、興味の反復的、常動的様式 ●アンケート考察  「自閉症について分りやすく説明され、大変勉強になった」との感想の一方では、医師という立場での話だったため「事例が少ない印象を受けた。教育現場の関係者からも話が聞きたい」という意見もあった。要望の中には「スクールカウンセラーや心理学、精神疾患に詳しい先生の話も聞きたい」という意見が寄せられた。 ◎平成16年度 テーマ:「自閉症の方の理解と関わり」 講師:よこはま・自閉症支援室(社会福祉法人横浜やまびこの里)室長 関水 実氏 主な内容:盲特別支援学校での配慮について(視覚的構造化が使いにくい場合) @場の構造化 A時間の構造化 Bルーチン・パターン C音の構造化 ●アンケート考察  「内容が分りやすく、自閉症への理解を深めることができた」という感想が多く、日々接している児童・生徒の言動について理解することができ、指導の参考にしていきたいという声が多かった。充実した内容に満足したという感想があった半面、時間の余裕が無く質疑応答の時間を持てずに終了したことには、「残念だった」「もっと話が聞きたい(1回で終わらずに継続的に聞きたい)」といった声もあった。今後の要望としては、「本校の卒業生について、本人自身からの話や、就労先(福祉施設・作業所等を含む)の方からの話が聞きたい」「盲聾の二重障害についても取り上げて欲しい」「(本校と連携している)横浜訓盲学院の先生や職員から、重複障害児童生徒の寄宿舎指導(生活指導)について聞きたい」などが寄せられ、重複障害児・者に関して幅広く関心を持っていることが伺えた。次年度に向けて参考としていきたい。 5.今後の課題  ノーマライゼーションの思想が浸透し、盲・ろう・養護学校では障害の重度・重複化が進んできている。保護者の思いを汲み、個別に支援をしていく中で、盲特別支援学校でも視覚障害の指導に限らず、リハビリテーションの知識技術はますます必要とされてくると思われる。  盲特別支援学校は視覚障害者のための環境は整えてきているが、肢体不自由者(児)のためには快適な環境とはいえない。リハビリテーション科の医師や理学療法士(PT)、作業療法士(OT)のアドバイスにより、机や車椅子などは障害に応じた対応ができると思われるが、校舎内外の全ての環境を全ての人が心地よく使用するには難しいものがある。  職員の知識技術の向上と環境をどう整えるかが今後の課題である。リハビリテーション科の医師による検診・臨床指導や理学療法士(PT)、作業療法士(OT)研修による助言や指導は、本校の職員の知識技術の向上に役立っている。幼児・児童・生徒の障害の状態は一人ひとり異なるため、今後も更に研修を続けていきたい。