ITC活用の推進と情報メディア支援(図書館)この6年を振り返って -1999年〜2003年横浜市立盲特別支援学校における校内情報化の推進- (文責・執筆)横浜市立盲特別支援学校 高等部教諭(前司書教諭)松田基章 (執筆協力)横浜市立盲特別支援学校 中学部教諭(現司書教諭)藤岡理恵 横浜市立盲特別支援学校 専攻科 理療科教諭   新城 直              横浜市立盲特別支援学校 幼稚部 教諭      岩屋真澄 支援協力:情報教育支援部・情報メディア支援部(図書館)   T 視覚障害者のICT(Information and Communications Technology)活用の意義  旧来、視覚障害者にとってのコンピュータ利用といえば、主に「感覚代行機器」としての位置付けで、いわば、視覚の代替として用いていた。もちろん、その機能は重要なものであり続けると思うが、現在、ネットワークが整備され、どこでもだれでもがコンピュータがネットに接続できるようになって来つつあり、コンピュータを単なる感覚代行機器としてだけではなく、より積極的にコミュニケーションを広げる手段として、さらに積極的な情報発信や双方向のコミュニケーション手段としてより有効に活用することの位置付けがより重要である。もちろん、今まででも、本を出版(墨字・点字など)したり、新聞への投稿・テレビやラジオなどのマスコミを利用する等の方法もあるが、それらより、はるかに自由度があり、可能性や柔軟性を持っているのがイントラネットおよびインターネットの活用である。 1.視覚障害者と社会生活の変化の現状  今や私達の生活は、コンピュータなしでは成り立たない程といっても過言でない。もちろん、危険性をはらむ情報が飛び交ったりする陰の部分にも注意を喚起しなくてならないが、その得られる情報の量やリアルタイムに伝わる情報のスピードは視覚障害者自身の生活スタイルを変えていくことが予感される。視覚障害者でも、電子メールアドレスやWebページを持つ人が多くなっており、今後は銀行の電子決済などもIT化が急速に進展している。視覚障害者にとっても、情報の収集・整理・活用など電子情報やインターネットを使いこなせることが必須の条件になりつつある。就職に際しても案内をWebから入手し、メールを使いこなせることが就職の条件になってきており、情報の授業ばかりでなく、日々の生活・各授業で通常・一般的に活用されるようにならないと本当に使えるようにはならないと思われる。教員が使えないからコンピュータは使わない授業展開をするといったことは許されなくなってきているところまで来ている。情報格差(Digital Divide)についても格差をなくすような研修や配慮・研修も急務である。このような社会状況に対して平成10 年7月29 日の教育課程審議会の答申で、すべての学校がインターネットに接続できるよう計画的な整備が進められ、昨年からは高等学校(盲特別支援学校高等部)に教科情報の授業が新設された。17年度には全国のどこの学校にも、各教室に、テレビやVTRを使うのと同じようにコンピュータや大型ディスプレーが配置され、インターネットを活用する授業展開が準備され、旧来型の授業からの転換が求められ、大きく動き始めて来ている。このような教育改革・社会変革の波の中で、例えば、教科書や出版物のディジタル化(Daisy 図書の普及やバリアフリー出版など)も進んできている。そんな中で、校内の情報発信基地としての学校図書館の情報センター化なども併せて考えていかなくてはならない。本校では、Windows の登場以来、視覚障害児(者)にとってのパソコンのハード・ソフトを含めたコンピュータ環境について情報教育支援部等での検討を重ねてきた。1998 年以降、校内のネットワーク化・コンピュータのWindows化環境(ソフトウェア・ハードウェア)を含めて校内環境を一新してきた。また、経済産業省(旧通産省)の実証実験OCR を使った読書支援システム「よみとも」(1999 から2002 年)への参加を始め、WEBのアクセシビリティ「みんなのウエブ」(総務省2001 年〜)・スピーチオの実証実験(経済産業省2002 年)・第33回全国学校図書館研究大会図書館(横浜会場2002)・図書館情報化の研究(2002年CEC 学校企画)同様に、音楽科研究1999 年・理科研究2000年CEC・Flashのアクセシビリティ研究2003年CEC)など多数のプロジェクトに参加してきた。  これからの特別支援教育の在り方は、学校と地域・大学・企業・などとも協力の輪を広げ少しでも早期の夢の実現を果たす為に、最先端の研究機関への協力関係などへの連携を積極的に図るべきだと考える。また、個に応じたニーズに応えるべく支援機器の導入・研究開発を図っていくべきである。 2.本校の改善の方向性:具体的な方策は以下の通りである。(1999年検討〜) @教育用コンピュータ等の整備・促進 Aコンピュータ教室を中心とした従来のPC配備から、多様な学習目的に対応できるように普通教室、特別教室、学校図書館(情報メディア支援)などへの配備を進める。 B校内のネットワーク化も進め、いつでも、どこからでもインターネットに接続できるようにすることが必要である。大型映像システムなどの導入も含め、学校の情報システムを検討する必要がある。 C学校図書館については、コンピュータやインターネット利用環境を整え、司書教諭のメディアの専門家としての資質を向上させ、「学習情報センター」として機能強化を図っていく必要がある。 D進路指導室、保健室、職員室等へのコンピュータ配備を進め、学校の公務の情報化を促進する必要がある。将来的には、教職員一人一人が授業や学校運営等のために活用できるよう、学校内のコンピュータ整備を推進することが望まれる。 E特別支援教育においては、障害の種類や程度に応じた情報支援機器やソフトウェアの整備・充実が必要である。 F生徒の幼・小学部から中・高等部・専攻科までの一貫した指導体型の策定および職員の研修・スキルアップが必要である。コンピュータの基本操作の習得などの一斉指導には、集中型の配置、各教科や総合的な学習においては普通教室などへの分散型の配置が適していることを踏まえ、学習の目的に応じてコンピュータ教室、普通教室、特別教室、多目的スペース、学校図書館などへの多様な配置を推進する。 ※ 学校内においてもネットワーク化を進めるため、必要な場所に電源と校内LAN用の情報端末を設置することや、移動が容易なノートPCの導入も進めていく。特別支援教育諸学校のように複数の部を設置されている場合には、それぞれの部に応じて、必要なコンピュータを設置しネットワーク化を図る。社会との交流が困難になりやすい場合や、障害の特性に応じて教科指導等におけるコンピュータやネットワークの利用が特に効果的と認められる場合には、各教室毎にコンピュータの設置やネットワークの導入について配慮する。 U.コンピュータ(情報端末)ならびにインターネット活用の意義と課題  テキスト情報の内容把握については音声スクリーンリーダーや点字ディスプレー・点図ディスプレー等で確認が可能ある。また画像情報などは、基本的に絵や写真が見えなくても、適切な説明文を補助的に併記したり、複数の形式で情報が提供される必要がある。最近では紙の印刷物で提供されてきたために、視覚だけでしか利用できなかった情報が、Webページやマニュアルの電子化で、視覚以外の方法でも利用できるようになってきている。ただし、電子化の方法を視覚のみに依存した形式にしてしまうと、どのような装置やソフトをつかっても視覚障害のある人には利用できない。W3C などの国際団体では情報の電子化についてガイドラインを作っており、Flash やPDF 形式も画面読みが可能になってきている。官公庁でも、情報のユニバーサルな表現に配慮するようになってきている。情報の送り出し側も比較的容易にユニバーサルな表現を実現できるようになってきている。そのような技術・知識を普及させて、障害の有無に関係なく利用できる情報コンテンツを蓄積していくことが、今後の社会にとって重要である。 【活用事例】 ・音声対応メールソフトウェア使ってメールをする。(コミュニケーション) ・Web 検索をWeb 閲覧ソフトウェアを使って学習する。(情報検索のバリアフリー) ・OCR 音声読み上げソフトウェアを使って一般墨字図書を活用する。(自力活用) ・墨字をスキャナにかけ、拡大表示をさせ、TXT文に保存し活用する。(自力活用) ・専用点字ワープロを使って、墨字文作成に活用する。(作業の効率化) ・墨字文を点字編集ソフトウェアで変換し、点字プリンタで印刷をする。(文書変換) ・点字入出力装置や音声認識ソフトウェアを使って文字入力をする。(AT活用) ・墨字文を2次元バーコードに変換し、専用の装置で読み上げ活用する。(AT活用) ・お絵かきツールで、歩行訓練用メンタルマップを描いて、物の位置の記憶(空間認知)に活用する。 ・表示拡大ソフトウェアを使って拡大表示をし、フォントサイズや画面のコントラストの調整をした上で教科指導用のソフトウェアを活用する。 ・Daisy 図書を専用閲覧ソフトウェアを使って活用する。(図書の音訳活用) ・CD・DVD辞書等を閲覧ソフトウェアを使って検索をする。(マルチメディア) ・視覚障害者情報ネットワークにログインし登録図書を活用する。(DB活用) ・ネットワーク上の共有ホルダにデータを保管し共有で活用する。(共有資料の利用) V 本校における情報教育特色と新たな展開 1.感覚代行補償機器としての積極的な活用  視覚障害者にとってパソコンを活用することは、単にコミュニケーションの手段としてではなく、視覚の障害を補う道具としての積極的な活用・指導が各領域にわったって必要である。現在のWindows PC 上のソフトウェアを活用することにより、それらを実現することが可能となってきている。 2.校内ネットワークシステム構築の必要性 1)コンピュータ教室はもちろん普通教室、特別教室、学校図書館などへ(移動用ノートコンピュータ)を含めたコンピュータを配備し、各教科で、必要に応じて、多様な学習目的に対応できるようにコンピータ(特にインターネットの利用)が利用可能な環境づくりが必要となる。 ・各教室(55箇所)に情報コンセントを設置、100baseTX を基幹としてネットワーク化を進めた。総延長が約6km以上に及んでいる。(1999年〜) ・無線LAN の試験運用、アクセスポイントの設置した。(2000 年〜) ・VLan(L3)により 教員用・生徒用・事務用LAN配線の切り分け(2002年)  ・基幹回線のGベース化・複線化、およびセキュリティに配慮した物理的な分離を検討(2005年〜) 2)校内LAN等のネットワーク化を進めると同時に、特に校内イントラネットの充実を図り、電子掲示板・メール・チャットシステムなどを通じて生徒間や教師間を問わず相互にコミュニケーションを図るシステムつくりが重要である。またプリンタやスキャナ等の機材の共同利用、デジタルカメラまたVTR教材やビデオ画材等を配信・提供できるシステムづくり(近い将来には視聴覚との融合も視野に入れて)の積極的な導入も必要である。 教育課程における「ネットワークを利用した情報収集・伝達・加工等の技術の習得する。(以下略)」などが可能になる。本校ではイントラネットを重視し、校内掲示板、校内メール、共有ファイルの活用などを図っている。視覚障害者や健常者を問わずにTXTファイルでの情報交換をめざしている。また、教材資料のデータベース化を進めていきたい。 3)ネットワークを利用した、共有ファイル等の利用により、授業等で教材ファイルの利用や児童・生徒の作品の相互利用や相互評価が容易に可能になる。また教師の教材データ等の準備が、ネットーク上で可能になり、効率的な授業の展開が可能となる。特に、図書館で点訳図書等や教材を電子図書館として提示することで、かさばる点字文書を持ち歩かずに済むことは視覚障害者にとって大きな意義がある。またCD・DVDといったマルチメディア教材や・辞書等を(著作権に配慮)共同利用が可能になる。(点訳ボランティアの皆さんが作成してくれた文書や資料を校内、とりわけ図書館を情報センター化することで、資料の効率的な検索がどの端末からも可能になる。視覚障害者にとって大変な紙の資料や教材の持ち運びも少なくなる。) 4)インターネット・電子メール・テレビ会議等が必要に応じて利用できることは、就職活動や生徒交流そして情報収集の幅を飛躍的に広げ、学校内・外とのコミュニケーション(校外へのメール・校内事務連絡(主に職員)の「電子化」をはかることが可能になり、視野を広め交流の場を拡大することが可能となる。外部とのテレビ会議等は、もちろん有効な手段であるが、回線に左右される部分がある。共有ファイルの利用は、かなり効率度を上げている。現在、大型映像システムなどの研究を試行している。(松下財団 理科研究2003〜2005)これも有効な手段である。学校の情報システム自体を既存の概念から再検討する必要がある。また、学校図書館については、「学習情報センター」として機能強化を図っていく必要がある。 近い将来には、児童・生徒・教職員一人一人が1台ずつの個人が利用できるコンピュータ端末を整備し授業や学校運営等のために活用できるよう学校内のコンピュータ整備を推進することが急務である。また、弱視生徒の目の保護のために液晶画面を使うなど、視覚障害の種類や程度に応じた情報機器やソフトウェア等のIT支援機材の整備・充実が必須課題である。 W 本校における情報教育の実際(1999〜2003) 1.幼稚部 ・簡単なお絵かきや図鑑・学習用CD を閲覧・利用 ・絵本などの物語を含んだマルチメディア学習・音楽CD等を利用 ・カタカナ・ひらがなの学習 ・Flashを使ったゲーム教材の試行 2.小学部 ・6点入力・フルキー入力を活用した文書入力。 ・詳細読みに配慮した教育漢字指導(全盲・弱視) ・点字辞書検索・お絵かきソフトの利用 3.中学部 ・数学:点字編集ソフトウェアで盲ネット検索資料 を活用・教科CDの利用 ・技術・家庭:情報検索・電子メール・制御・4大アプリケーションの利用、食物、料理レシピ検索等 ・音楽:インターネットによるメール掲示板交流 ・市内学校との音楽交流「作曲」 ・英語:語学CDを活用し、発音などのソフトウェアの活用・英語キーボードの活用 ・社会:地域情報 インターネットによる検索 ・国語:青空文庫の利用・詩 音声と画像(インターネット利用) 4.高等部普通科 ・自立活動・教科情報:ワープロ文字入力・点字 6点入力・フルキー入力・名刺制作 ・自分の紹介・・Web ページ制作「html」 ・チャット・情報検索・電子メールの利用 ・社会:インターネットの検索「地域・産業」 ・音楽:楽譜作曲・MIDI・携帯着メロ作り ・インターネットによる交流「TV会議」 ・理科:情報検索 ・数学:点字ディスプレーの利用 ・英語:メールの活用 ・体育:保健指導におけるネット検索 5.専攻科(理療情報を中心に) ・インターネットによる論文・文献検索・課題学習   ・Web ページ作成 ・ワープロ指導・医学辞書検索   ・教科書や国家試験問題のTXT 化による利用・Daisy 図書の活用 6.図書館(情報メディア支援部) ・電子図書の整備「点字図書→点訳電子図書に整備」図書点訳済みデータの共有化(校内イントラ) ・インターネット情報検索(調べ学習) ・OCR による自動書籍図書朗読システムの活用(全学部) ・医学・辞書(語学など)各種CD検索・DVD図書の閲覧 ・図書館蔵書管理システムの活用・蔵書検索(バーコード処理)(全学部) ・外部図書館DBの検索(視覚障害者情報システム) ・マスコミ情報などユビキタスラジオの活用(音声 PDA)貸し出し ・DAISY 図書の校内配信(CDサーバ) ・メーリングリスト・Web 活用(ボランティア協力) 7.イントラネット(職員・生徒共) ・電子掲示板・電子メール・画像、動画を含めたファイルの共有 8.教職員間の効率的な公務処理 ・セキュリティの管理徹底・ウイルス対策 X 生徒・児童・教職員・保護者の情報活用について反応や効果(2000年度3月調査)  本校では、コンピュータ教室は、ほぼ常時生徒に開放している。休み時間や朝、放課後は、ほぼ毎日、児童・生徒が自由にコンピュータを使うことが可能である。 1.幼稚部 ・コンピュータの導入により児童の学習への動機づけになった。 ・音楽や動画キャラクタを楽しみにしている児童がいる。 ・パソコンに興味を持ち、カタカナ・ひらがなの学習が楽しくなった。 2.小学部 ・重複障害生徒が、音声が出るマイク付簡易型PCに興味を持ち、コミュニケーションを図っている。 ・点字指導をPC処理により、記録ができ、辞書検索も可能になり、学習意欲の向上がみられた。 ・文字入力によって漢字変換を行うことにより、漢字に興味を持った児童が現れた。 3.中学部 ・詩を、Internet動画利用で表すことにより、生徒の興味を喚起できた。(国語) ・修学旅行の準備で、旅先の情報を検索し、興味・関心を喚起できた。(学級指導) ・交流で、校歌を互いに音楽キーボードのインターフェイスを使い交歓した。(音楽) ・全盲の生徒がOCR文字読み上げソフトウェアを使い、感激していた。(自立情報) ・修学旅行しおり作成に弱視・全盲を問わず全員で執筆に参加ができた。(学級指導) ・メール・掲示板交流で国際的な交流が可能になった。(自立活動) 4.高等部普通科 ・日常的コンピュータを使い、Web検索等インターネットを利用している。(各教科) ・生徒は、毎日のように、新聞社のページ等にアクセスするのが日課になっている。 ・メール・掲示板交流で、他校・海外ボランティアと交流の幅が広がった。(各教科) ・音声PDAやスピーチオなど最新の機材を体験した。(教科情報) ・メモ帳を使ってのHTML作成に取り組んだ。(自立情報) ・音声による星座の観測・南中の観測を行った。(理科) ・点字ディスプレーを使って数式の学習が可能になった。(数学) ・弱視者が大型タッチパネルプラズマDP利用でPC操作が可能になった。(理科等) ・音声5.1サラウンドシステムを使ってDVD鑑賞を学級単位で行った。(学級活動) 5.高等部専攻科 ・聴覚等障害者との交流が電子メールで可能になった。(日常活動) ・点訳した文書をかなりの生徒がコンピュータ活用できるようになった。(自力活用) ・課題学習に取り組み教科書のHTML化に取り組んだ。(理療情報) ・Daisy 図書を専用ソフトウェアで利用している。(図書館・マルチメディア活用) ・弱視者がPDFファイルを上手にPCに読み込み活用している。(日常) 6.その他生徒・教職員・保護者の感想 ・移動型コンピュータをインターネットに接続する事ができることにより、点訳者など他人の力を借りずに独力で読むことが可能になった。それによって読書や情報検索の領域が飛躍的に広がった。 ・渡されたプリントや各種活字・資料・カタログなどをOCRで読み取り、音声によって読み上げたりファイル保存ができることは、視覚障害者にとって大きな喜びである。 ・距離を越えてのメール交換依頼や卒業生との交流が発生した。盲特別支援学校では少人数化が進んでいるが、テレビ会議等を通じて幅広い交流や情報交換が今後、実現必要。 ・就職会社の人事担当に電子メールによる職場開拓の働きかけをし、一般社会ヘの理解を深める成果を上げている。 ・ デジタルカメラでとった画像や動画を瞬時に、ネットワークを通じて見ることが可能になりまたそれらをその場で印刷し配布することで、授業や教員の研修会及び交流会等の記録に利用し好評を得た。 ・視覚障害者がコンピュータを利用することや体験することで学習意欲の向上・興味関心の広がり、ひいては、障害を克服する力、さらには生きる力を養うことができ、夢を持つことができる。 Y 今後の課題と問題点 1.情報教育推進のための予算面について  横浜市立盲特別支援学校では、99年9月からのネットワーク始動で、機材等の根本的な台数が不足している。古いマシンは使えるようになったとしてもさらに音声読み上げ(スクリーンリーダー)等の導入は(性能上の負荷が大きく)無理である。実際、入ったとしても音がとぎれたり、フリーズして止まってしまうケースが頻発する。従ってこれらは、晴眼者用として理科準備室や職員室等で教員が使っている。また、ネットワーク関連の資材は、整合性もあり、安価になってきたとはいえ、買ってきてすぐ使える状況にはない、他機種の混じり合った環境では、こちらでは使えても、あちらでは使えないという環境が発生する。 機材整備や予算は配当は、各校画一的なものでなく、必要度に応じた配当が必要である。 2.ソフト・ハードウェアの課題について重要な点をまとめると以下のようになる。 ・ソフトやハード、ネットワークインフラの、必要に応じた予算の配当が望まれる。 ・機材の保守管理・技術的なサポート等、いつでも相談できる窓口設置が望まれる。 ・情報担当の持ち時間数の軽減や専属のメンテナンススタッフや定期保守点検要員の配属が望まれる。また、サーバからの自動復旧システム等の構築が望まれる。 3.インターネット社会の進展に伴う課題について  近年のネット社会の急速な進展・インフラ整備には、急速な動きがある。社会システムの変革の中で、日常生活に必要なものも変わりつつある。銀行などのカードシステム・交通利用システム・金融システムなど新システムを、否応なしに利用せざる得ない状況が近づいてきている。新時代を生き抜くためには、それらを自在に使いこなし、危険性や利便性を理解し活用する能力を身につけなくてはならない。また、スピーディなコミュニケーションを図る手段としてもインターネットなどの活用は欠かせないものになってきている。従って、学校で教科指導等で利用するに当たっては、端末の台数に応じた回線容量、安全に利用できるセキュリティ確保が必要になる。特別支援教育諸学校、特に盲特別支援学校においては、教室に居ながらにして国際的に利用・活用できるインターネット(メール・TV会議など)は、有効な双方向のコミュニケーション手段である。情報発信の意味でWeb ページの作成は有意義なものである。ただし、Web検索においては新技術を競うあまりに、有名な会社や公的なサイトが視覚障害者にとって利用できないサイトになっている場合も多い。現在、高齢者・障害者へ向けてのWeb アクセシビリティ(JIS法)等が答申されたが、これらの観点の社会的な普及の浸透が必要である。また、メールID・インターネットを安全に利用できるシステムの構築が必要である。   今後の課題についてまとめると以下のようになる。 ・視覚障害者にとって外出や出張をしなくても日常利用できる情報端末やTV会議システムなどの構築・配備が必要である。 ・必要な機材や機器の予算的な配当が必要である。 ・学校でサーバを持ち、Web等を学校の判断でアップできるシステムが望まれる。(公的支援を含む。) ・これらのセキュリティを保てるようなシステムが望まれる。 ・日常的な教科学習の中で、21世紀を積極的に生き抜く視覚障害者のインターネットや機材利用での視点を指導者が持ち、普通にPC利用ができる環境が必要である。 4.情報メディア支援部(図書館との連携)  視覚障害者にとって、インターネットは読書支援の最大の武器である。 視覚障害者は情報障害であるとも言われるように、盲特別支援学校の生徒および一部教員にとっては、視覚から得られる情報の消失は、各種情報の80%に及ぶとも言われる。昨今の急速なIT時代背景の中、図書メディアの急速な変遷の中、インターネットを通じて電子図書館(視覚障害者点字情報ネットワークなど点字情報DBへのアクセスを含む)や音声図書館・マスメディアの配信等によってバリアフリーの状況は急変した。その中で、学校図書館の存在意義や在り方も問われている。現在世の中に毎年出版される図書や雑誌は500万冊といわれる。横浜市立盲特別支援学校では、図書館ボランティアを中心に各種ボランティアにご協力いただき、学校図書館の新しい在り方を探り、「どの教室からもインターネット!そして図書検索利用ができる図書館に!」をスローガンに、以下の内容を実現・研究・推進中である。 1) 横浜市立盲特別支援学校情報メディア支援部(図書館)の活動 図書館においても、今までの紙ベースの図書館からネットワークを通じてどこの教室端末からも、いつでもリアルタイムに利用できる状況が必須条件である。また、授業の中で生徒の興味・関心を高め社会性や人間的な幅を広げる意味で多様なボランティアの協力を得て、授業に反映させる、また、短時間で効果的な授業展開が期待できる。また、情報活用能力を高める上で、インターネットやイントラネットの積極的な活用により、生徒の個に合わせた効果的な指導が期待できる。 それらを実現するための、学校図書館としての、取    り組みとして、次のの活動に取り組んでいる。 (1) 点訳・音訳等のデータの電子DB化(過去のデジタルデータの整理) (2) イントラネットへの図書データ公開・CD等の教科等での活用の推進(国語・社会・英語等の活用) (3) 図書館 だより「情報メディアNEWS」の発行(一部、校内Web 公開) (4) デイジー図書の活用研究(テープ録音図書のデイジー化) (5) 点字データの電子化(イントラネット共有ホルダの活用「各教科等での活用) (6) 視覚障害者点字情報ネットワークの活用研究 (7) 校内読書コンクール・読書会(図書館ボランティアの表彰と交流会の開催) (8)ボランティアの活動内容の一部をWeb 公開(ボランティア) (9) 音声対応図書管理ソフトウェア・点図活用ソフトウェア等の研究             (コンピュータ教育開発センターCEC2002年発表) (10)スピーチオの研究 (通商産業省実証実験2002年参加) (11)ユビキタスラジオ マスメディア配信実験・IP電話(未来基金2003年発表) (12)図書館ボランティアメーリングリストの開設・運営(2002年) 2)図書館ボランティア等の協力体制と内容  長年にわたりご協力を頂いている図書館ボランティア(約20グループ、約530余名)の活動状況や内容ならびに、今までの図書館ボランティアとは異なる交流ボランティアやパソコンボランティア等、様々な形のボランティアも育ちつつある。 【主なボランティアグループ】・デイジー横浜(録音図書等のデジタル化)・ネットワーク麦(パソコン点訳・点図)・鎌倉市点訳赤十字奉仕団(各種点訳・製本)・藤沢点訳奉仕会(英語・楽譜等点訳、絵本)・蓮の実(図書館整備)・あじさい/テンフレンド(手で読む絵本)・ひまわり(手打ち絵本)・花みずきの会(拡大写本)・港北録音グループ(対面朗読)・戸塚朗読会(音声訳)<その他>・福祉交流 橘女子学園(8年目図書館整備他)・マッシュと愉快な仲間達(Web 作成ボランティア) 3)情報教育の推進と図書館(メディア支援部)の活用・連携 図書館センター化構想と情報教育の推進の関係は、視覚障害者の在籍する学校においては、前述のように特に密接な関係がある。先進的なIT機材の活用の試験的な積極的導入と活用と共に、個に応じた情報の多様なメディアの提供、レファレンスなど図書館司書教諭・支援ボランティアなど学校の枠を超えての支援体制作り、情報提供の発信基地としてのサービスの提供が必要である。また、学校教職員ばかりでなく、卒業生や保護者との連携・地域との連携など児童・生徒を取り巻く環境をよりよく有機的に整備する必要がある。 5.指導者の教員の情報等における意識改革と指導者養成。  一般教員においては、教員の情報モラルや情報リテラシー・コンピュータリテラシーなどのスキルアップのための研修が必要である。各学校の情報担当者の時間的な措置と共に、全国的な連携やリアルタイムに相談が可能なシステムの構築が必要である。またネットワーク管理を含めた公的な支援・ボランティアの育成など学校独自の自助努力と共に、公的なバックアップ体制の構築が必要である。学校の情報化は情報教育単独でなく、各教科領域・福祉・国際理解などの下支えとなるものである。 各学校では、校内研修会を含めた各種コンピュータ研修会等や全校体制での情報化に向けての共通理解を図る必要がある。 Y 今後の展望  現在、特別支援教育の諸学校では、センター化等の話が論議され、一般校の盲児・生徒の支援が進められている。ノーマライゼーションが叫ばれる昨今、一般校で普通に盲児童・生徒が教育を受けられるのは理想であるが、機材や人員など物理的な面で、すぐには環境整備が難しい部分がある。特に図書館(情報メディア)の資料などは市内の特別支援学級からの貸し出し要望も多く、協力支援体制を組んでいかなくてはならない。また、情報機器・視覚障害者用ソフトウェアやハードウェアの設定設置・選定・操作方法や使い方の指導等のニーズも多い。またポスト2005が叫ばれる中、まだ市内各校のネットワーク整備も特別支援教室の末端まで届いておらず、ネットワークを通じたICT支援(電子データを配給する。など)のところまでは至っていない。盲特別支援学校自体の運営も人員削減が課題となってきており、より効率的な運営・何らかの方策が必要になっている。また、盲特別支援学校を卒業したOBや新卒業生などに対していつでも相談に応じられるような、システムの構築も考える必要があるだろう。 【参考文献及び参考サイト】 1)特別支援教育とユニバーサルデザイン(特殊教育総合研究所) (http://www.nise.go.jp/portal/universal/abt/abt_site.html) 2)情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて.イメージ図(文科省 H11年) (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/002/toushin/980801b.htm) 3)情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて(文科省 H11年)支援体制図 (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/002/toushin/980801c.htm) 4)視覚障害者とコンピュータ. (http://www.asahi-net.or.jp/~be8s-snjy/conputer.html) 5)横浜市立盲特別支援学校におけるIT支援教育.(2001〜2003) (http://www.yokomou.ed.jp/joho/) 6)第33 回全国学校図書館研究大会(横浜7/30〜) 横浜市立盲特別支援学校図書館ボランティアサイト(http://www.yokomou.ed.jp/tosyo/tosyo/) 7)IT時報.2001 年5月. (http://www.i-ise.com/jp/press/pres_200105a.html#2) 8)コンピュータ教育開発センター音楽・理科・教科情報・図書館研究(1999〜2003). (http://www.cec.or.jp/e2a/) 9)視覚障害のある人のためのコンピュータ・アクセシビリティ (http://www.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/atac/atac2000/pc/atac2000pc.html) 10)マイクロソフトアクセシビリティサイト (http://www.microsoft.com/japan/msdn/accessibility/general/msdn3.asp)