平成16年度 全日本盲特別支援学校教育研究大会研究会 発表 新科目「検査評価学・臨床入門」の創設と指導実践報告 専攻科教諭 綱川章 他 1 はじめに  学習指導要領の改訂では、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の専門性の向上を図ると共に、各学校が創意工夫を生かし、特色ある教育を展開できるようにするという考え方が基盤にある。本校ではこの観点から教育課程の見直しを行い、創意工夫により、平成13年度から、基礎と臨床を結ぶ科目として、「検査評価学・臨床入門」という科目を新しく創設して指導にあたってきた。  そこで今回、この「検査評価学・臨床入門」の指導実践について報告し、諸先生方のご批判を仰ぎたい。 2 本科目の内容 (1)対象学年:理療科2年、保健理療科2年 (2)時間数  理療科:検査評価学 週2時間、臨床入門 週1時間         保健理療科:検査評価 週2時間、臨床入門 週1時間 (3)科目創設の考え方  ア 新学習指導要領:(抜粋)     今回の改訂においては、次のような基本方針の下に、理療の教科・科目の見直しを行っている。  (ア)あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の専門性の向上を図るという観点から指導内容の見直しを行うこと。  (イ)学校の実態、生徒の障害の状態、進路希望等に応じて各学校が創意工夫を生かし、特色ある教育を展開できるようにすること。  イ 創意工夫と科目の設立  (ア)本校の教育課程の特徴   a 臨床実習重視   生徒2〜3名に対して、教員1名を配置して臨床を行っている。   b 国試対策   国試の直前対策として3学年に他校模試の実践演習を行い、それに伴って時間割を一部変更し、2学年の臨床入門指導を集中的に行っている。  (イ)科目創設の経緯    a 従来の臨床医学総論週5時間(理論と実技)を分割し、同週2時間(理論のみ)の科目と、実技を必要とする項目をまとめた週2時間分を「検査評価学」として新設した。   b 従来、理療応用実技実習の一部として、本校では2学年の1月第4週から基礎実習(あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう)を統合して「特別臨床」と呼称し、この期間に3学年の4月から臨床実習に入るための事前指導(臨床オリエンテーション、診察実習など年間にしておよそ週1時間分)を実施してきた。そこでこれを「臨床入門」として週1時間の科目を新設した。   c 以上を合わせて「検査評価学・臨床入門」週3時間を創設した。 (4)本科目の目標  ア 西洋医学的な診察法の実習の充実を図る。  イ 臨床入門としての実習の充実を図る。 (5)本科目の位置付け  ア 理療科検査評価学は臨床理療学 週2時間、臨床入門は臨床実習 週1時間に位置付けている。  イ 保健理療科検査評価は臨床保健理療 週2時間、臨床入門は臨床実習   週1時間に位置付けている。 (6)本科目の取り扱い   実習としての性格を持たせ取り扱う。また、指導内容は、カルテ等の資料も含めて臨床実習のそれと同一にして取り扱っている。このことで、基礎科目で取り扱う理学的検査等やカルテ等については、臨床実習で取り扱っているものと同一となり、基礎から臨床へと直結した指導の流れを実現させることができた。 (7)内容:(資料1、資料2参照)   以下、本科目の年間指導計画から指導項目の主なものを示す。詳細は資料1を参照されたい。   前期では問診に続いて本校のカルテの実習、触診に続いて身体各部の触診、打診、聴診、血圧測定、身体計測、知覚検査、反射検査、徒手による理学的検査の実習を行う。   後期からは本校のカルテを使って四大症状(頚肩腕痛、腰下肢痛、膝痛、肩関節痛)に対する診察の実習、そして、2月頃から3学年の臨床実習に向けて、10時間ほどの臨床準備指導を行っている。   なお、本校のPOS形式のカルテは、四大症状別に必要項目が書かれている。 3 実践結果 (1)実施年度:平成13年度より実施 (2)学年:理療科2年、保健理療科2年 (3)指導体制:本校では、実習の場合、1学級の生徒6名以上であれば、極力指導者は複数配置 (4)実践結果   13年度:理療科生徒12名、指導教諭4名、2クラス編成、保健理療科        生徒2名、教諭1名   14年度:理療科生徒13名、指導教諭4名、2クラス編成、保健理療科        生徒5名、教諭1名   15年度:理療科生徒12名、指導教諭4名、2クラス編成、保健理療科        生徒2名、教諭1名   16年度:理療科生徒6名、指導教諭2名、1クラス編成、保健理療科        生徒7名、教諭2名 (5)教育効果   客観的なものはないが概ね評価は良い。具体的には次のような意見が寄せられている。  ア 今年度で3年目となり、以前より指導内容が定着しているようだ。また、以前より詳しく指導できている。  イ 従来、理学的検査等の指導は座学で指導した後、期間をあけて、2月から集中的に臨床準備指導を行ってきたが、これを後期全体を通して指導していることで、定着度が高くなっているのではないか。  ウ 3学年の臨床実習の場で患者に接する生徒の態度が以前より良くなっている。  エ 前期に基礎的な指導、後期に臨床入門、3学年で臨床実習と、効果的に繋げて指導ができているのではないか。 4 問題点と課題 (1)問題点   保健理療科でも理療科に準じて、ほぼ同様の内容を指導しているが、生徒の実態によっては見直しが必要と思われる。 (2)課題  ア 従来の問診に変わり医療面接を取り入れて、内容の充実を図る必要がある。  イ カルテの記載方法の指導についても、医療面接の導入によって開かれた質問に対応できるよう、検討する必要がある。本校の場合、これまでは診察項目を印刷してあるPOS方式カルテを用いて、順番に問診して記入すればよかったが、解放型の質問を多く採用することになると、それが困難になると予想される。  ウ 今後は複数配置の教員間で細かいところまで打ち合わせをして、より充実した指導をする必要がある。 5 まとめ (1)本校では、2学年において「検査評価学・臨床入門」という科目を新設して、現代医学的な診察法の実習および臨床入門としての実習を行ってきた。その結果、これまでのところ、3学年の臨床実習の場において、知識・技能の定着度や患者への対応等が向上しているのではないかと思われる。 (2)本科目が基礎から臨床へと繋げる効果的な役割を果たしているものと考えられる。 (3)今後医療面接を加えて、より時代にマッチした内容にしていきたい。 使用教材  (1)臨床室のカルテ (2)カルテの書き方 (3)触診法 (4)主観的データ・客観的データの取り方 (頚肩腕痛、腰下肢痛、膝痛、肩関節痛) 使用教科書 理療科   (1)オリエンス研究会編 「臨床理療学」   (2)盲特別支援学校理療教科用図書編纂委員会編「理療基礎実習」 保健理療科 (1)オリエンス研究会編 「臨床保健理療」    (2)盲特別支援学校理療教科用図書編纂委員会編「保健理療基礎実習」 資料1  検査評価学・臨床入門年間指導計画 │月/週 │大項目 │中項目 │ │4/2〜5/1 │1.診察の方法 │A.問診 │ │ │2.カルテの取り扱い │A.カルテの説明 │ │ │ │B.カルテの記載方法 │ │5/2〜6/1 │1.診察の方法 │B.視診 │ │ │ │C.触診 │ │ │ │ 身体各部の触診(頭顔面部、頚肩 │ │ │ │ 背部、腰部、胸腹部、上肢、下肢)│ │6/2 │1.診察の方法 │D.打診 │ │ │ │E.聴診 │ │6/3〜6/4 │1.診察の方法 │F.身体計測(血圧、長さと周経) │ │7/1〜7/3 │1.診察の方法 │G.知覚検査法 │ │ │ │H.反射検査法 │ │9/1〜10/2 │3.主な症状に対する理学 │A.徒手による整形外科的検査法 │ │ │ 的検査法の実際 │ │ │10/3〜11/1 │4.臨床で扱う四大症状に │A.頚肩腕痛 │ │ │ 対する診察の実際 │ a.問診、検査、評価、記録の実際│ │11/2〜11/4 │4.臨床で扱う四大症状に │B.腰下肢痛 │ │ │ 対する診察の実際 │ │ │12/1〜12/3 │4.臨床で扱う四大症状に │C.膝痛 │ │ │ 対する診察の実際 │ │ │1/2〜1/4 │4.臨床で扱う四大症状に │D.肩関節痛 │ │ │ 対する診察の実際 │ │ │2/1〜3/1 │5.臨床準備 │A.オリエンテーション │ │ │ │B.施術の見学 │ 資料2  四大症状別カルテの例 頚・肩・上肢の症状用カルテ用紙に記載の診察項目 「主観的データ」 │ 1.自発痛 │ 2.夜間痛 │ 3.頚部の運動痛 │ │ 4.上肢のシビレ感 │ 5.主要症状 │ 6.上肢挙上による痛み│ │ 7.筋力低下 │ 8.巧緻運動障害 │ 9.増悪・緩解因子 │ │ 10.歩行障害 │ 11.膀胱・直腸障害 │ │ 「客観的データ」 │ 1.圧痛・硬結・運動痛等│ 2.筋萎縮 │ 3.頚椎棘突起の叩打痛 │ │ 4.三頭筋反射 │ 5.スパーリング・テスト│ 6.ジャクソン・テスト │ │ │ │  (過伸展圧迫検査法)│ │ 7.肩押し下げ検査法 │ 8.イートン・テスト │ 9.アレン・テスト │ │ 10.ライト・テスト │ 11.エデン・テスト │ 12.モーレイ・テスト │ │ 13.アドソン・テスト │ 14.触覚障害 │ 15.二頭筋反射 │ │ 16.橈骨反射 │ 17.握力 │ 18.望診 │ │ 19.聞診 │ 20.脈診 │ 21.腹診 │