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学校図書館2001年9月原稿

横浜市立盲特別支援学校図書館元司書 渡辺浩子さん著

いつでもどこでも利用したくなる楽しい図書館!を目指して

本校には、幼稚部から高等部普通科に加え、あんま・マッサージ師及び、はり・きゅう師を目指す生徒たちが学ぶ専攻科がある。 その年齢層は、0歳の教育相談児から60歳近くの方までと、非常に幅広い。 そして、「盲」「準盲」と呼ばれる、眼鏡をかけても視力が0.03未満で、全く見えないか、見えても学習・生活面で普通文字の使用が困難な生徒たち及び、眼鏡をかけても視力が0.3未満の「弱視」の生徒たちが入学する。 現在は、114名の生徒たちが在籍していおり、その約半数の生徒たちは、ルーペや拡大読書器などを使って普通文字を使用しているが、視力だけでなく、視野が狭い、色の識別が難しい、物が二重に見える、眩しい等の問題を抱えており、一人ひとりの見え方はいろいろである。 本校図書館は、在籍する生徒たちは勿論、その家族や教職員、更には卒業生も利用者の対象としている。 したがって、蔵書は絵本から医学書に加え、視覚障害教育関連書までと幅広く取り揃えている。そして更に、利用者の眼疾や状況に合わせて情報提供手段も異なるため、メディアの種類も非常に幅広いという特徴がある。 また、図書館は3階建ての校舎の3階に位置しており、1階の幼・小学部、2階の中学部・普通科の各教室からは決して近い場所にあるとは言えない。そこで、普段から利用してもらうために、生徒たちを惹きつけるような工夫をし、楽しく・利用しやすい図書館作りを常日頃より心がけることが大切である。 このような現状を踏まえ、図書館では、次のような様々な取り組みを行っている。

生徒たちをめぐる読書環境の変化

  • 蔵書の種類は今、過渡期を迎えている
  • 蔵書は大きく分けて、点字・録音・墨字(注1)・拡大図書から成り立っている。 ただ、ひとくちに点字図書といっても、文字だけの図書以外に、手で読む絵本(注2)・点字付き絵本(注3)・点図(注4)等と様々である。 また、これまでは手作りの図書が主流であったが、パソコン点訳の普及により、FDデータで保管をし、必要な時に音声で聴いたり、プリントアウトしたりできるようにする、電子図書館化構想も進行中である。 一方、録音図書もテープだけでなく、デイジー図書(注5)や、CDがある。 更に今年は音の出るしかけ絵本を取り入れたところ、とても好評である。 今後は検索ができるCD-ROMや、ビデオなど、多種多様な図書を導入する方向なので、幅広いメディア構成に対応できるように体制を整えるとともに、利用指導を徹底していかなければならないと考えている。

  • 音声対応パソコンの導入効果は絶大
  • 近年、パソコンの普及と画面読み上げソフトの導入により、電子化された文字情報(テキストデータ)を音声で聴くことができ、視覚障害者にとっても大きな力となっている。 また、インターネットを検索してホームページを音声で聴くことも、新たな読書や調べ学習のかたちとして位置づけられるのである。ただし、画面読み上げソフトは、映像情報だけでは音声化できないので、ホームページの情報には、テキストデータも添付していただけると助かるのである。 本校では近年、全校校内ネットワーク配線が職員の努力のもと完成した。図書館には現在パソコン12台を設置しており、これらを辞書やインターネットなどの検索別に整備したいと考えている。 そして今後は、実際に図書に触れて読める形態に加え、校内ネットワークを活用して、どの教室からも検索・読書をする機会を設けるというように、図書館の在り方も2本立ての方向へ進みつつあると言える。 そのため、幅広い蔵書管理の徹底化をはかるべく、音声対応の図書管理ソフトの導入が急務である。

  • 利用者自身が使える施設・設備に
  • 図書館は冷暖房完備となっており、いつでも快適な環境を提供している。 また、新刊・読み物・調べ物・音声・専攻科・パソコンコーナーにブロック分けをしており、学年を問わず、目的に応じて利用できるような配置にしている。 その他、拡大読書器2台・デイジー図書専用再生機10台・「よみとも」付スキャナー1台・自動高速ダビング機1台・消磁器1台など、特殊機器を取り揃えており、原則的にセルフサービスとなっている。そのため、音声対応のコピー機を導入したり、利用案内を配布している。 また、配置図を墨字・点字で掲示する他、「トーキングサイン」の設置を試み、できる限り自分自身で探しものをし、目的を果たすことができる体制作りに取り組んでいる。 今後は、OA機器を中心とする図書館内設備の整備・充実と利用指導の徹底化をはかるとともに、そうした機器に詳しい人材の確保にも努めていかなければならない。

図書館業務エトセトラ

  • ボランティアとの相互協力体制を!
  • 墨字図書以外、ほとんどの蔵書については、ボランティアさんの協力のもと、自館製作しているのが現状である。 その作業は、業務上重要かつ大半の位置を占めている。近年、印刷技術の向上にともない、絵や写真を多種多様に使用し、理解を深める図書が増える傾向にある。 そんななか、点訳・音声訳する際に、より理解し易くするためにそれらの扱いをどうするか、悩みは尽きず、日に10件近くの連絡に追われることも多々ある。必要に迫られてボランティアさんの協力を仰ぐようになり、今年の6月現在、33グループ・個人、延べ532名の方々が本校の図書館を支援してくださっている。 また、その分野は、点訳・音声訳・製本・拡大写本・対面朗読・図書整備・データ遡及と多岐にわたっている。なかには10年以上の長きにわたりお世話になっている方々がいる一方で、HPを作成したり、メール交換をする新しい分野でのボランティアさんも増えつつある。 このように、図書館業務はボランティアさん無しでは成り立たないのが実状で、ボランティアさんは貴重な財産である。 そこで、昨年11月の110周年記念式典には表彰状をお送りし、今年6月の懇談会では現状をお伝えするとともに、ボランティアさん同士の情報交換の場を設けた。 今後も感謝の気持ちを忘れずに、生徒たちにより良い図書を提供するべく、協力体制を整えていきたいと考えている。

  • 今必要な情報を、素早く提供したい
  • 図書館では約1万5千冊を所蔵している。ただし、点字・録音図書類は分冊されることが多々あるので、実際のタイトル数は決して多いとは言えない。 また、1冊の図書を制作するのに通常、点訳・製本・装備の作業を経て約3ヶ月かかる。 そこで、リクエストがあった際にはすぐに点訳・音声訳を依頼するのではなく、CD-ROM『点字図書・録音図書全国総合目録』を活用し、全国の点字図書館から館々貸出を受けている。 また、「盲特別支援学校点字情報ネットワーク」(注6)で検索をし、データをダウンロードするのもとても有効な手段である。 このように、省スペース化という観点からも、出来る限り他館から借り、データでもらえるものをフル活用し、素早く要望に応じられるように心がけている。 最近は、図書館内で見つからない場合、その場で諦めてしまうのではなく、リクエストを出してくれる傾向にあるのはとても嬉しいものである。 なお、出版物のテキストデータがあると、自動点訳することができ、音声で聴くこともできる。更に、個々人の読みやすい字体や字の大きさへ簡単に変換することもできるのである。 残念ながら、現在の著作権法上では、出版物をデータにすること自体が違法とされているが、この場合はより読みやすいかたちで読書の機会を提供したいのであって、営利目的ではない。 今後、著作権法の改正にあたっては、是非こうした現場の実状を鑑み、利用者が視覚障害者に限られる点字図書館などの情報提供施設においては、蔵書のテキストデータ保管及びオンデマントサービスの提供を認めていただけるよう、切に願わずにはいられない。 そして、ゆくゆくは、国会図書館へ献本する際にテキストデータを添えることを義務づけ、原本保障の形で、点字図書館へ提供していただけると大変有難いのである。

  • レファレンスあれこれ
  • 図書館には毎日様々な相談や問い合わせが飛び込んでくる。例を何点か挙げてみよう。

    • 修学旅行の下調べの場合、生徒の眼疾に合わせて、利用する資料の種類を変えて提供する必要がある。
    • 専攻科からは医学書に出てくる難しい漢字の読みや、疾患別の治療法、そして国家試験の過去問について聞かれることが多い。
    • 視覚障害の原因が内科疾患の場合、眼疾に関するレファレンスもある。その際には、眼科学の専門書を調べ、インターネットで最新情報の検索を行う他、医学情報センターや地域の図書館にも協力を仰ぐことになる。
    • 光村出版の国語の教科書に『手と心で読む 伝え合う心』という点字のお話が掲載されて以後、人権・交流教育の一環として、地域の学校などから、図書類の貸出の依頼・問い合わせが格段に増えている。
    • 「点訳したので使ってください」との電話や、寄贈図書が非常に多く、困ることがある。寄贈されるものが、必ずしも活用できるものとは限らないので、その旨をお伝えし、丁重にお断りすることも多々ある。
    • 視察・見学者が非常に多いので、外部配布資料を常時設置している。このように、多種多様なレファレンス業務をこなすのは、とても至難の業である。
    • このように、多種多様なレファレンス業務をこなすのは、とても至難の業である。

  • 図書館専任教員の複数配置を求む!
  • 図書館の運営にあたっては、司書教諭有資格の事務職員が専任で1名と、各学部の指導係6名が当たっており、蔵書の整備・生徒委員会の指導(月1回の委員会及び週1回のお昼の放送)・「本は友だち」(読書感想文・標語・朗読)コンクールの開催・図書館報の刊行等を行っている。 しかし、先に述べた通常業務はほとんど専任の職員が行っているのが現状で、とても1人ではこなしきれない。そこで、平成15年からは是非、専任教員を複数配置していただきたいと切に願ってやまない。

おわりに

今日の情報化社会の中では、視覚から得られる情報は80%を越えると言われている。 そんななか、視覚障害は、情報障害でもあると言える。そして近年、生徒たちの障害の多様化・重複化が進み、中途失明者が増加する傾向にある。 そうした状況下、生徒たちの読書権と図書館利用の保障が、本校図書館の最大の課題となっている。そこで、社会生活を送るうえで、役立つ施設や図書の情報を得る手段をきちんと伝えていきたいと考えている。 生徒たちの「読みたい」「知りたい」という気持ちに応えていきたいと思い、楽しく・利用しやすい図書館を目指して、学校中を駆け回る日々を送っている。

注釈

  • 活字印刷された市販の一般図書
  • 挿絵を布等を用いて立体的に表現した図書
  • 墨字図書に透明な点字テープを付けた図書
  • 大中小の3つの点で図を表したもの
  • 音声訳テープをCDの形に編集した図書
  • 全国規模の点字情報データベース

学校図書館2001年9月原稿

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