COMPUTER WAVE (会報)
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- COMPUTER WAVE 情報教育部会広報誌第10号 -

『 ブロードバンド・シミュレーターからリアルな世界へ 』    副会長 浪崎一彦 (上永谷中)

  △「ブロードバンド」

   「ブロードバンド」、この無限の可能性を秘めた言葉を、今までは手の届かないところにある葡萄のように思い、それらに関する記事は意識的に遠ざけていたのですが、昨年夏あたりからその葡萄の房が、たわわに実りすぎたせいか急に私の手の届くところへ降りてきたので、やっとの思いで手にすることができましたが、これから先がまた大変でした。

 ADSLは、膨れあがるばかりの通信費に頭を痛めている一般庶民の私にとっては、この技術を開発した人がまるで神様のように思えます(本当に感謝の気持ちでいっぱいです)。

 しかし、一般にも広く知られているように過渡期的な技術であり、本格的に光ファイバーが導入されてくると、まあ間違いなく消えていく運命のものではあるが、それだけではなく、さまざまな問題点も抱えています。

 NTでもISDNとの絡みもあり、当初は継子扱いだったこの革新的技術が、本当のことはよくはわかりませんが、NTTのサボタージュによってなかなか広まらなかったということさえも、巷では噴かれていました。

 一番大きな問題点は、その人の運が大きく左右するという点です。

 運さえよければ特に何も考えることなく、ダイヤルアップやISDNってなんだったの(??)という世界を満喫できるわけですが、運の悪い人にはどうにもならない(接続すらできない可能性もある)という、あまりコンピューターに縁がない一般の人にとって、とても商品とは言いがたいところが何ともはや‥‥‥。

 コンピューター関連のわれわれ庶民の手にするような価格帯の部品では、いまだにこのような現代の一般社会常識ではおよそ計り知れないような非常識な商品が、秋葉原を中心に数多く出回っているので、このあたりの事情に慣れていない方にはおよそ信じがたいことかも知れません。

 結構慣れていると自分では思っている私でさえ、今回のADSLの件では「なんだかな−」という気持ちに何度か陥りました。

 昨年の夏休みにはADSLを開通させるつもりが、後述のR/Cヘリの件もあったりもしたのですが、先にADSLにした卒業生の今村君と連絡をとりながら、あれこれやっているうちに、結局今年の4月4日開通という事態になってしまいました。

 抽象的な話が続きましたので、いま少し具体的に話を進めます。

 ADSLの大きな問題点として運がつきまとうということを先ほど言いましたが、これは具体的にどういうことかというと、今みなさんがどこに住んでいるかということが重大な問題となります。

 ただ電話局あるいは中継器からの距離だけが問題になるのではなく、具体的に実証することがむずかしいさまざまな遠因によって、ADSLが快適に使えるかどうかが決まるようです。ちなみに、私の置かれた環境は局からの実距離4030mで53dbとかなりの悪条件で、NTTとso-netに問い合わせた時には、真顔で(電話なので見えるわけないのですが、全く繋がらないかも知れませんと言われ、その時私はすでにモデム内蔵ルーターを買ったあとだったので、途方に暮れそうになったことを鮮明に覚えています。

 しかし、実際に開通してみると、意外や意外、最高のコンディションの時は1M以上のスピードが出ますし、最悪のネットが混んでいる(ことだけが状態を悪くしているのかはよくわかりませんが)時間帯であっても、0.5Mを下回ることはほとんどありません。

 さらに私の家は集合住宅で、電話線のコネクタからパソコン置き場が遠く離れており、できるだけ目立たないように配線してほしいという家族の要望で15mもの長さの電話線で結ぶことになり、しかもその電話線も製造されてから15年近くになろうという年代物なのです。

 この事実をso−netやNTTの人に話すと、一瞬絶句し、「え!」と言うコメントしか返ってきません。

 私もこの結果は意外だったので、試しに10MBぐらいのファイルをダウンロードしてみたら1分少々で落とせたので、それなりのスピードが出ていることは間違いないです。さて、これで満足するはずのない私ですから、問題なくつながったことを確認したら、今度は小学生のころから夢に見ていたテレビ電話をぜひやってみようと、さっそく今村君へ電子メールを送り(名古屋在住のため、実際にはもう2〜3年会えないでいたので)、お互いとても乗り気になり、その週末、私は今年の卒業生を連れて一路秋葉原へ‥。

 予想に反してテレビカメラは案外値引率が悪く、白黒でもいいからとにかく安いものを探そうという思惑はすぐにはずれ、今までの経験から信頼しているロジクールの無難なものを購入することにしました。

 秋葉原を丸一日歩き回り、夜9時半ごろ帰宅し、さあ、これで久しぶりに今村君の顔が見られると、安易に考えていたのが、設定を終えて2人がパソコンのカメラの前で会話を始めると、こちらの映像と音声は正しく彼のところに伝わっているらしいのですが、彼の映像と音声は一向に届きません。

 しかたなく、こちらは映像と音声、彼はチャットで文字のみというかなり変な感じ(たとえて言えばスパイ大作戦の潜入側と本部のやりとりのような)の対話が深夜1時すぎまで続き、さすがの私もへロへロになり、2時前には床に就きました。

 翌日(というか数時間後)の7時には気がかりで起きてしまい、ネットの情報をあさりまくり、午後4時より今村君との交信を再開、途中食事と入浴のため1時間あまり中断しましたが、午後10半ぐらいまで、前述スパイ大作戦状態での珍妙なコミュニケーションを繰り返したのでした。

 その間うまくso-netに電話がつながったので(インターネットに接続しながら電話ができるって本当に便利ですね、netmeetingについて確認したところ、我々の調べあげた結果と同じく、ルーターのファームウェアの問題と、netmeetingの一般のソフトでは行わないIPアドレスの処理にあるようです。

 アッカの提供する(買わされる)しょぼくて値段の高く不安定だからやめた方がよいと言われているUSBのADSLモデムならnetmeetingでテレビ電話が可能という情報も得ましたが、さすがいまだに体質は電電公社のままのNTTがバックについているアッカらしく、契約と同時でないと、それも最初にアッカに送った電子メールに「購入希望」としなかった顧客には売ることはしない、というということなので、現在使用中のNTT・ME(これもNTT)のMN7300のファームウェアがアップデートされる(かどうかはわかりませんが)のをひたすら待っているのが得策かなということで、もうしばらく様子を見ることにしました。

 ただせっかくの料金固定なので、messengerか何か別のソフトを使って音声のやりとりだけは成功させたいと思っています。

 何せ今村君は名古屋在住なので、電話ではゆっくりと話すこともままならないので、音声だけでもメリットはありますので‥‥‥。そうは言っても、一日も早くテレビ電話を開通させたいと思っています。

 何はともあれ、インターネットに接続中に電話ができるというだけでもADSLのメリットは大きいので、私のように、ISDNを価格の面であきらめていたような方は、いつになるかわからない光ファイバーを待っていないで、この際ADSLにトライしてみてはいかがでしょうか?

 
  △ シミュレーターからリアルな世界へ

 話は変わってシミュレーターの話題です。パソコンの世界のシミュレーターで有名なものにフライトシミュレーターがあります。

 アメリカでは本物の飛行機の教習所でこのパソコン用のシミュレーターを使用しているとも聞いていますが、この日本で飛行機の免許を取得するにはかなりお金がかかるらしいし、もし取得しても通勤や観光に使うということも一般人には非現実的なことなので、あくまでもフライトシミュレーターはゲームとして使われているのが一般的だと思いますが、もう10年ほど前からになるでしょうか、R/C(ラジオコントロール)の世界でも特に空もの(飛行機とヘリコプター)にパソコンでのシミュレーターがありました。

 実際に模型を飛ばすための、一般にプロポとよばれているコントローラーをLPでか232Cのポートにつないで、操縦法を身につけられるというものです。

 私が常々お世話になっている、実際にR/C機を飛ばしていたK先生がごく初期のものを購入され、何回か操作させていただいたのですが、当時はまだIntelのCPUも数字だけで呼ばれていた時代でしたので、ワイヤーフレームの機体(というとかっこよく聞こえてしまいそうですが、わかりやすく表現すると線画で描かれた紙飛行機)がとても殺風景(木や山やその他のオブジェを少しでもふやせばとたんに処理が重くなるので)な空間を動いているという、とてもシンプルなものでした。

 正直言って、エンジンのR/C模型歴が四半世紀となる私でさえも、感情移入などとんでもないというシロモノであり、またその当時の値段でたしか4万円を優た超えていたので、私には高嶺の花ということもあり、あまり関心はありませんでした。

 ところが、3〜4年前にRealFlightというソフトが雑誌に載っていたのを見つけ、秋葉原でコントローラー付きで16.800円という、何とか手の出る価格だったのでさっそく購入し、ちょっと白々しい風景に目をつむりさえすれば機体はなかなかリアルに描かれており、たしかラダーやエルロンの動く様も確認できたと思いました。

 ただし、まだ私自身が「空モノ」に対していまひとつ本気になれなかったので(理由はたぶん多くの人と一緒です(お金がかかりそう、自分には作れそうもない、飛ばす場所がない、危ない等々)、ほとんど使うことなくReal Flightはタンスの肥やしになりました。

 月日は流れて2001年7月、万世の焼き肉をご馳走するという条件で家族で秋葉原へ出かけ(重いモノを買うとき、帰りの運転を家内にまかせるため、年に数回家族で秋葉原へ行きます。万世の焼き肉はおいしいけど値段が‥‥‥)、その時何げなく寄ったAという、現在は「空モノ」専門店となっているR/Cの老舗で目にしたものは、大きく進化を遂げたReal Flightの勇姿でした。もうこれは買うしかないと思ったのですが、コントローラー付きではありますが、42,000円也はちょっと…。

 ということで迷いに迷っていたところ、店内の8畳はどのスペースで重さわずか250gメインローター直径50cmあまりという、小型電動ヘリコブターを実際に飛ばしている人がいて、「もうこれはやるしかない」と雷に打たれたように固まり、いっそのことこのR/Cも買ってしまおうか(〈〈;)とまで思ったのですが、R/Cヘリの操縦は普通の人にはとても無理ということを思い出し、店内に置かれたこのシミュレーターを操作してみると‥‥。こりや修行せんとあかんわ。

 まずはまともに離陸してくれません。上がれば上がったでどこへ行くのかヘリまかせ・‥‥・。ということで、とりあえずシミュレーターだけ買って帰りました。

 そして修行の日々、夏休みなどは約5時間連続で「修行」したこともありました。

 なぜそこまでというと、小学校から行きつけの模型屋のおやじさんなどに「R/Cヘリやろうと思ってるんだ。」と話すと、「もう年なんだから無理・無理、やめといた方がいいよ!」という貴重なアドバイスばかりが返ってきて、唯一「やれるよ」と言ってくれたのは、ヘリを買いに行った秋葉原のツクモexのそばにあるAの店長だけでした。

 せっかく高いシミュレーターも買っちやったし、とにかくシミュレーターだけは何とか修得しようと悪戦苦闘の日々が続き、食らいついたら絶対に離さないという「すっぽん」の親戚である私は、遂に1ケ月後、シミュレレ一夕ー上ではホバリングでそれなりに空中停止できるようになったのでした。

 せっかちな私はさっそく秋葉原へ直行し‥‥・、というわけで、例の電動ヘリは我が家のパソコンの上で巽を休めています。

何でこんな話を、と思われた方のために説明を追加しますと、私は初任のころから「メカトロニクス部」という部活動の顧問をしていますが、昨年までは、現実には分解、組み立て、プログラミングなどのコンピューターそのものについてしか教えることができなかったのでしたが、メカトロニクスのリアルな世界のうち、中学生あたりが最も関心がありそうなR/Cの世界、それも空を自由に飛び回るものをぜひ体験させたかったのです。

 現実問題として安全に自由にR/C機を飛ばせる場所など、この横浜にはあまりなく、ましてや私の勤務先のすぐそばなどは絶望的だったし、シミュレーターも前述のように紙飛行機だし、その紙飛行機をまともに飛ばせるパソコンを部費でまかなうことすら夢のまた夢だったので、今まではあきらめていました。

 しかし、時は流れ2001年夏、21世紀になっても私たちが小学生時代に夢見たものは、そのはとんどが夢のままでしたが、パソコンの価格の急落とそれに伴うコストパフォーマンスの急上昇、そしてほとんど現実と見聞違えるような美しいグラフィックを備えた優秀なシミュレーターの出現により、もうこれは「時は来たれり!」と、ただでさえ真っ赤っかのところへ持ってきて、さらに累積赤字覚悟で部活動の生徒とともにラジコンヘリに挑戦する決意をしたのです。

 ラジコンヘリを操縦したことのない方には全くわからない世界だと思いますが、ラジコンヘリはラジコン飛行機を自由自在に操れる方でも、まさに「修行」といったトレーニングを積み重ねない限り、まともに浮かせることさえできません。

 私のこの年齢では、まさに「挑戦」そのものだったのです。

 幸いにして、ラジコンヘリに強い関心を持つ部員たちに恵まれ、3ケ月あまりでなんとかホバリングが安定し始め、今は旋回飛行が何とかできるまでになりました。

 今年の春卒業していった部活の生徒のうち3人は、シミュレーター上ではきちんと飛べるようになり、実際のラジコンヘリももうすぐ飛ばせそうになっています。彼らが成人したら、みんなで遠出して思いっきり飛ばそうという約束になっています。

 いまだにラジコンヘリというと「お金が非常にかかる」というイメージが強い方が多いと思われますが、事実私も自分が始めてみるまでは普通のサラリーマンにはとても無理と思っていましたが、ここにもやはり技術革新と価格破壊の波が押し寄せていて、やる気さえあれば決してそんなにはかかりません。

 ラジコンヘリがものすごくお金がかかるというイメージが広まったのは、実際黎明期において、ラジコンヘリは一般サラリーマンの平均年収を上回っていたということも、何かの本で読んだこともありますし、また、一般にプロポと呼ばれているコントローラーも非常に高価な割には現在のとは比較するのもはばかれるほど性能が低いものでした。

 さらに黎明期には、ヘリの安定に欠くことができないジャイロもなく、もちろんパソコンすらないので、シミュレーターなど夢のまた夢の時代でしたから、操縦を覚えるためにはとにかく実際に飛ばしてみるしか方法がなかったので、よはどこの手の才能に恵まれた天才的な人はともかく、普通の人は数百万円もするシロモノをどんどんスクラップにしつつ、やっとこさっとこホバリングにこぎ着けるといった状況のようでしたし、一般的にはとてもやっていけなかったのです。

 しかし、今は安い店に行けば7万円以下でフルセット(ラジコンヘリを飛ばすのに必要なものがすべて揃っているもの)が購入できるし、シミュレーターできちんとトレーニング(修行((へ;))を重ねれば、そんなに機体を痛めることなく飛ばせるようになる、夢のような時代になったのです。もっとメカトロニクス技術が進んで先端技術が安く使えるようになれば、それこそスイッチボンでホバリング可能なラジコンヘリをおもちゃ売り場で見かけるような時代も来るかも知れませんが、あまり簡単なことはやりがいがありませんので、ラジコンヘリは今が旬なのかも知れません。

 実際「Real Flight G2」はラジコンを全くやったことのない生徒には難しすぎるかなと思って、キーエンスのレポリュ一夕ーのシミュレーターも員ってきて、生徒たちにやらせてみたのですが、やる気のある連中はどすぐに飽きてしまい、何でも安易に簡単にすればいいわけではないというよい教訓になりました。ヘリそのものよりも、どちらかというと、シミュレーターに42.000円を出すときが一番悩まれる時だと思います。

 それでも実物を飛ばそうと本気で考えるなら、人を傷つけることはないし、修理に頭を悩ますこともないので、そんなに高いものでなくてもいいですから、シミュレーターはあった方が断然いいと思います。たとえば、「プチコブター」なども初期の練習には結構有効です。

ただし、ちょっと前のノートパソコンで動かせる見た目がリアルなシミユレ一夕ーはとても少ないので、注意して下さい。

それは、フライトシミュレーターをリアルにするためには高速な3次元処理が必要不可欠なので、ちょっと古い機種ではこのあたりが極めて弱いか全く不可能なので、シミュレーターのソフトが起動さえしない場合もありますし、動いたとしても、今度は液晶のレスポンスの問題で、非常に目が疲れたりということもありますので、その点は知っておいて下さい。

また、これらの問題点は現時点(2002年4月上旬)でも、3次元性能重視の、それなりのお値段のはるノートパソコンでないと完全には解決されていませんので、これからシミュレーターも視野に入れて、パソコンを購入しようという方にはノートパソコンはお薦めできませんのでご注意下さい。

 現実にR/Cヘリが目の前を飛ぶのを、普段まず見ることのできないはど生き生きとした目で追いかける生徒たちを見ていると、ますますやる気が出てきます。

 日本には現在約1500機はどのラジコンヘリが産業用(農薬散布、航空写真撮影、噴火中火山の火口など危険な場所の調査など)として使われており、ラジコンヘリの操縦を覚えるということは、単なる趣味を越えているということも、最後につけ加えておきます。
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