ごあいさつ

校長あいさつ     

  

目標がその日その日を支配する

 令和 4 年4月  

    校長 永瀬 哲  

開校から14年目を迎えて

平成21年4月に開校した横浜サイエンスフロンティア高等学校は14年目を、附属中学校は開校6年目を迎えています。この4月には附属中3期生が高校に入学したことで、3学年すべてで高校からの入学生と附属中学校からの入学生がともに学ぶことになりました。中高一貫教育校としての本校のキーワードは「融合」ですが、文字通り「一つに融け合って」いる現実を目の当たりにして、あらためて生徒たちの前向きな思いと柔軟な思考に感心させられています。お互いの志の高さが相乗効果によって潜在的な力の発揮につながり、学校内外の様々な場面での活躍が顕著になってきました。

中高一貫教育校としての取組が進むにつれ、中学、高校という縦のつながりという点でもこの「融合」の成果が表れています。高校生の真摯な姿勢から多くを学んだ附属中生は、学習はもとより、コンテストなどにも積極的にチャレンジし、高校生が参加する大会でも優秀な成績を収めました。そして、附属中生に刺激を受けるように、高校生は更なる高みを目指しています。その結果、昨年度は「日本生物学オリンピック2021」での銀賞受賞をはじめ、「第17回全国物理コンテスト物理チャレンジ2021」優良賞、「日本植物学会第85回大会 高校生ポスター発表」最優秀賞(2名)、「TAMAサイエンスフェスティバルin TOYAKU2021」大隅賞(最優秀賞)、「化学グランプリ2021」支部長賞、「The 18th IEEE TOWERSUndergraduate Student Awardなど、いずれも全国レベルの大会での受賞が数多くありました。附属中生にも高校生にも共通しているのは、明確な目標を掲げ、その達成に向けて強い意志と地道な努力で最後までやり抜き、結果を出しているということです。

 

スーパーサイエンスハイスクール指定校として

本校は今年、スーパーサイエンスハイスクール(以下SSH)第3期の3年目を迎えます。世界に通用する科学技術人材の育成を使命とする本校にとって、SSHであることは特色ある教育活動を進めるうえでも重要です。具体的な取組として、課題探究型学習の学校設定教科「サイエンスリテラシー」をはじめ、小・中学生対象に実験や実習を行うサイエンス教室、高校1年次生対象のサタデーサイエンスなど、サイエンスエリートの育成を目的とした様々なプログラムがあります。

また、この4月からは「科学技術人材育成重点枠」の指定もいただくことができました。本校が教育理念として掲げる「世界で幅広く活躍する人材の育成」に向けて、海外の大学等との連携を積極的に進める計画です。依然として、新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、海外への渡航が厳しく制限されたことで海外研修の実施には課題があります。しかし、こうした状況にあっても可能な手立てを考え、オンラインを活用して海外にいる研究者や学生などとコミュニケーションをとる機会を設けました。また、日本で学ぶ外国人留学生を講師に迎えて英語プレゼンテーションを実施することで、サイエンスリテラシーⅡでの研究成果を英語で発表することもできました。さらに、海外大学の教員を本校の科学技術顧問としてお迎えするなど準備を進めています。

本校は将来を見据えて、今できるベストを尽くす学校です。「コロナ禍だから…」と言って最初から諦めるのではなく、学校として現状と課題を正確に把握して次の手立てを考えれば、可能性は無限に広がります。むしろ、コロナ禍を契機に新たな展開が始まりつつあると言っても過言ではありません。

 

目標がその日その日を支配する

大正から昭和にかけて活躍した社会教育家、後藤静香の詩に「第一歩」があります。この詩の最後は「目標がその日その日を支配する」で締めくくられています。目標をどう設定するかということは極めて重要です。自分の決めた目標によって、「第一歩」を踏み出す覚悟が異なってきます。つまり、目標がその日その日の自分の心構えや行動を支配するというわけです。容易に達成できるような目標であれば、最初の一歩にそれほどの覚悟は必要ありません。逆に、大きな目標であればあるほど、最初の一歩は慎重に、そして相応の覚悟を決める必要があります。なによりも、確かな目的意識を持ち、そこに至るまでのプロセスを考えながら一歩一歩の歩みを止めないことが大切です。

今春卒業した11期生は95名が国公立大学に合格しています。進学先を見ると、北は北海道から南は九州まで全国津々浦々です。また、例年進学者の多い理学、工学以外に、医学部医学科への進学者が増えつつあることも近年の傾向だと言えます。11期生はコロナの影響を最も大きく受けた年次です。しかし、多くの生徒は国公立大学の後期日程試験までを視野に入れて受験に臨み、結果を残しました。

もちろんこれは、先を見通せない状況の中でも諦めず、一人ひとりの生徒が強い意志をもって努力を継続した結果であることは言うまでもありません。目標の達成に向けて覚悟の「第一歩」を踏み出し、意味のある一日を粘り強く繰り返せる生徒が多いことも本校らしさの一面です。

 

横浜サイエンスフロンティア高等学校では、自分自身を成長させ、社会の発展に貢献しようという強い意欲の持ち主を育て、応援します。本校で未来の「サイエンスエリート」を目指してみませんか。

 

常任スーパーアドバイザーあいさつ

浅島誠先生は、平成31年4月1日より和田昭允先生に代わり、常任スーパーアドバイザーに就任していただきました。

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議論を通して自己を磨き、大志をもって楽しもう!

 浅島 誠(あさしま・まこと)
 

 産業技術総合研究所 名誉フェロー

 東京大学 名誉教授

 横浜市立大学 名誉教授

 帝京大学 学術顧問 特任教授

 日本学術振興会 学術顧問

 

 

 令和元年度に和田昭允先生に代わりまして常任スーパーアドバイザーに就任しました浅島です。和田先生は横浜サイエンスフロンティア高校の創設以来、長年名物の「和田サロン」を主宰してきました。その中で和田先生は並々ならぬ情熱を持ち、次世代を担うYSFH の生徒に、科学技術の重要性と科学哲学、人材育成の必要性を述べてきました。YSFH から次世代を担う「サイエンスエリート」を育てたいとの思いが一貫してありました。そこには日本は島国で、これから世界と伍して行くには「科学技術」が重要だと感じていたと思います。和田先生は今では世界中の生命科学の分野では誰でも使っている、DNAの自動解読を世界で初めて取り組まれた卓越した科学者です。それだけに、科学技術の発展がこれからの日本や世界に必ず必要であるとの深い思いからだと思います。先生は単に科学技術の発展だけを考えられたのではなく、若い次世代の生徒に「サイエンス」とは何か、「サイエンスエリート」とは何かと常に問い続けて議論してきました。先生は物理学が専門でしたが、生命科学にも造詣が深く、東大で新しく生物物理学の分野を開拓しました。これからは私も和田先生の「和田イズム」を継承してサロンをしたいと思います。

 

 私が横浜サイエンスフロンティア高校に始めてきたのは、今から約10年前の開校して間もないころでした。当時、高校の名前に「サイエンスフロンティア」が入っていたので自分も大きな驚きとそれ以上にワクワク感と期待感があったことをよく覚えています。横浜サイエンスフロンティア高校は、「サイエンスを本格的に勉強」しようとして看板を掲げた日本で初めての高校です。このオンリーワンでナンバーワンを目指している雰囲気は当時より変わらず現在まで醸し出されています。

 サイエンスは物事を良く観察することから始まり、その事象を十分なデータの下に正確に取り出し、自分の頭で考えて、起こっていることの原因と結果を論理的に結び付け、その後、判断や答えを出す知識と智恵のサイクルから生まれます。このサイクルからは新しい創意工夫や叡智、勇気も生まれます。

 ところで、サイエンス力を伸ばす方法の一つはお互いが議論することです。日本では議論する雰囲気は少ないように私は感じています。多くの皆さんは自分でよく考えていると思うのですが、それを口に出して議論することが少ないのではないかと思います。これから社会や企業、国際会議等に出ていった時、相手の考えを聞くことも大切ですが、自分の考えをきちんと述べることも大切です。相手に自分の考えを知ってもらい、お互いに尊重しながら、議論することは今後の自己啓発にもとても重要です。お互いを高めるコミュニケーション力です。自分の意見を述べながら相手の意見を聞き、議論を通してお互いがより高い知識や智恵、考えや志や希望に持っていけるのです。お互いの信頼の中での議論は、自分を高めるだけでなく仲間も一緒に更に向上していけるのです。この時、ザックバランに意見を述べあい議論をし、わからないことをトコトン話し合えば新しい見方や考え方を知り、とても有意義な時になります。その議論の過程で自分より優れている仲間の意見を聞いたり、感じたりした時、また自分も頑張ろうとなるのです。「彼はこのように考えているのだ。」「彼も自分と同じように悩んでいるのだ。」「自分の将来の姿はまだ見えないが仲間はどのように考えているのだろうか。」「サイエンスするとはどのようなことだろか。」「成績を上げるにはどうしたらよいのであろうか。」「自分の目標をどのように作り上げれば良いのだろうか。」等、これらは皆さんの多くが常日頃から考えていることであり、また悩んでいることだとも思います。大志に向けて希望を持ち成長させようとする時、色々な問題が出てくるのは当たり前です。その問題を乗り越える勇気と知識と智恵の基盤がサイエンスです。これからは自分の進む道は自分でレールを敷き一つ一つ着実に歩みを続けることです。そのために自分自身を磨くことは一番大切ですが、仲間と議論してお互いが一緒に高い志と希望を持って成長することが出来れば、とても素晴らしいことなのです。

 横浜サイエンスフロンティア高校・附属中学校の素晴らしい環境の中で、優れた先生方や先輩、良い仲間に会い、学ぶことの楽しさ、サイエンスをする事の喜びを全身で感じ、大いに学校生活を実りあるものにして下さい。