グローバル スタディーズ特別講座

 1・2年次生の希望者による登録制の講座で、年間6回ほど放課後の時間などを使って行っています。フィールドワークや外部講師の講演などで得た知識を、グループディスカッションで深め、年度の最後にプレゼンテーションを行います。

授業時間外の活動ながら、GS特別講座の登録生徒数は年々増加しています。平成29年度の登録生徒は143名、平成30年度は170名で、1年次生の3分の2が所属しています。

 

第1回「横浜市内中心部バスフィールドワーク」

 第1回は「横浜を科学する!」をテーマに「あかいくつ」バスで横浜市内のフィールドワークを行いました。参加生徒たちは、教員から提示された歴史的な場所と世界とのつながりについて、事前に調べて説明資料としてまとめた他、昨年度経験している2年次生は、当日の点呼、誘導などの役割も行いました。

 英語とハングル語で表記された地図を手に本校からバスに乗車し、横浜市内中心部を巡りながら、それぞれの場所で、事前学習で調べた内容を発表しました。教員からは補足説明と共に、知識のみならず、「なぜ」そうなったかという問いかけが行われ、社会科学的な視点から生徒たちはさらに理解を深めていました。

   

 

第2回「世界の熱帯林の役割と日本への影響」

 横浜には、FAO(国連食糧農業機関)、WFP(国連世界食糧計画)、ITTO(国際熱帯木材機関)など、多くの国際機関が日本事務所を置いています。第2回は「横浜の国際機関に学ぶ」をテーマに、ITTO国際熱帯木材機関広報担当オフィサーRamon Carrille(ラモン・カリーオ)氏をお招きし、特別講義を行っていただきました。

 講演では、世界の人々の約3分の1が生活に薪を利用していること、木材の密輸の現状、密輸を防ぐために行われたプロジェクトの内容などについてお話いただきました。森林を保護すると同時に、各地域の人々の経済活動を支えるためには、熱帯林を守るだけでなく、上手に使うという持続可能な管理という視点も示していただきました。

   

 
 

第3回「SDGsの現在とこれから」

 SDGs:Sustainable Development Goals(国連持続可能な開発目標)について、フェリス女学院大学国際交流学部教授高柳彰夫氏をお招きし、特別講義を行っていただきました。

 講演の中で、SDGsは「誰も取り残さないこと」を重視し、そのため、目標に“End”という表現がよく使われていること、未達成国には紛争国が多く、平和や人々の政策決定参画を重視する必要があることなどを話していただきました。

 われわれは「日本人」であり、「地球市民」でもある。対症療法だけにならず、根本的に援助を考える必要があるというお話に参加生徒たちは熱心に耳を傾け、終了後も多くの生徒が質問をしていました。

   

第4回「暴力・戦争と人」

 第4回は、地球や人類の存続を妨げる「暴力」をキー概念に諸問題を考えるというテーマで、フリージャーナリストで映像作家でもある土井敏邦氏をお招きし、特別講義を行っていただきました。

 講演では「暴力・戦争と人」をテーマに、土井氏自らが現地で取材されたパレスチナでの映像をまず3本視聴しました。その中で一人一人の生命を意識する大事さ、メディア・リテラシーの視点などについてお話いただきました。土井さんは、講演中も生徒の座席まで行って話しをしたり、質問に答えたりしてくださり、熱心に世界の現状を知る立場から高校生へのアドバイスをしてくれてました。生徒たちからも多くの質問が寄せられ、それぞれに丁寧にお答えいただきました。

 

第5回「テーマ別でのグループディスカッション」

 第5回のGS特別講座は、これまでの講座で受講したことや、自らの興味関心を踏まえて、テーマ別のグループディスカッションを行いました。事前にSDGsの目標を中心に9つのグループを設定し、生徒たちは自分が希望するテーマのグループに入りました。

 当日の議論をより深めるために、各班のリーダーを事前に集めて話し合いの方法などを確認しました。その中で「外面(経済、環境)と内面(気持ち、意識)の2つの視点を持つ」、「開発と保護の両立を目指す」などが確認されました。

 当日は各グループのリーダーが工夫をしながら、濃い話し合いを展開していきました。テーマごとに「食品ロスに対する法律の制定を考えてみたい」、「よく働いてもなぜ貧困があるのか、勤勉で真面目でもなぜ貧困があるのかなど、貧困と経済について考えたい」、「兵器を使わない、物理的破壊が伴わない戦争、または人権を侵さない戦争は許されるのか」などの意見が出され、終了後も各グループで後日任意に集まり、さらに議論を重ねるグループもありました。 

 

第6回「テーマ別でのプレゼンテーション」

 第6回のGS特別講座は、1年間のまとめとして、前回のグループディスカッションで話し合った内容を各グループがまとめ、全体の場で発表し合いました。

 グループ①「太陽光発電のメリット、デメリット」

 グループ②「犯罪から考える街づくりマレーシアと日本」

 グループ➂「現代社会での教育の負の悪循環を考える」

 グループ④「食品ロスをなくすための法体系を提案する」

 グループ⑤「日本における貧富差と社会保障」

 グループ⑥「企業開発と生物保護は両立できるか、水俣病から考える」

 グループ⑦「メディアのあり方を考え、政府と国民の考えを重ねる」

 グループ⑧「戦争とは何かを構造的にとらえながら、その形を分析する」

 グループ⑨「太陽光発電のメリット、デメリット」

 

【生徒感想カードから(一部)】

・この講座で今までより世界のことを考えるようになった。世界のニュースも見るようになり、将来海外に行きたいと思うようにもなった。

・自分が知らなかった様々な知識を得ることができた。特にプレゼンでは自分が考えていなかった他の考え方を聞けて、とても新鮮だった。多方面からの視点がわかったというのがGS特別講座の一番の収穫だった

・どの発表も意識を持つことの大切さが挙げられていた。人々の意識を変えるのは難しいが、それができれば大きな力になる。

・バスツアーなど、校外に出て調べたり、知識を深める活動を増やしていければ、より考えを深めていけると思った。実習や体験が増えればさらに楽しいだろうと感じた。

・普段は深く考えずにスルーすることも、一度立ち止まり、物事の本質を考えることができるようになった。

・世界的な問題について理解を深めることができた。興味を持って活動している他の子たちから刺激を受けた。

 

希望制特別編「東京多文化バスツアー」

 GS特別講座登録生徒の希望者14名で実施しました。参加生徒は、事前に訪問先に関連することを調べ、当日東京に向かうバスの車中で、事前学習の内容を発表しました。在日韓人歴史資料館では、引率教員からの説明を受けた後、各自で館内を見学しました。ミャンマー料理「ルビー」では、店主から料理に関する説明を受けながらミャンマー料理をいただき、東京ジャーミーでは、担当の方からお話を伺った後、礼拝も見学させていただきました。

  
 

 

希望制特別編「東北大学災害科学国際研究所シンポジウム」

 東北大学災害科学国際研究所主催(大震災の日)のシンポジウムに、GS特別講座登録者の17名が参加しました。シンポジウムでは、研究所の地震研究、伝承研究等のほか、地元メディアの災害・教育担当の講演もあり、生徒たちは熱心にメモをとっていました。フィールドワークで視察した旧荒浜小学校では仙台市防災環境都市推進室の鈴木憲一氏が案内してくださり、当時の被害や地元の方々のことについてお話いただきました。