SSH 国内研修
奄美大島研修
奄美大島研修 報告書
1.目 的:
実習やフィールドワークを主体とした「驚きと感動」による体験を通して、科学に対する興味・関心を触発していくことを目的に、関東とは異なる植生や海洋生物等を有する奄美大島を研修地とし、現地のフィールドワークおよび調査を実施する。また、奄美大島の高校生とお互いの課題研究を通して交流を図り、生徒自身が行っている研究や島の課題について新たな知見を得る。
2.日 程:令和6年9月10日(火)~9月13日(金) 3泊4日
3.参加者:本校生徒 5名(1年次4名、2年次1名)、 引率教員2名
4. 研修先および研修内容
①事前研修
日程:令和6年8月29日
場所:横浜サイエンスフロンティア高校 生物実験室1
講師:本校教員
内容:「マングローブについて、奄美大島の環境」
②奄美大島の概要
鹿児島県奄美大島は横浜より約1400km離れた島嶼である。鹿児島本島からも約380km離れており、沖縄本島、佐渡島に次ぎ、日本で3番目に大きな島である。奄美大島は、日本で2番目に大きいマングローブの原生林、国の特別天然記念物アマミノクロウサギなど太古の生命が息づく金作原原生林、美しい水平線と亜熱帯の風景を思い起こさせるあやまる岬など多くの自然を有する。
奄美大島の気候は亜熱帯海洋性で、四季を通じ温暖である。降水量は全般的に多く、年間2,800mmの雨が降る。日最高気温が25℃以上の夏日の期間が112日間もあり、台風の常襲地でもある。そのため、植生も温帯性のものとは異なる。こうした特徴を持つ奄美大島で研修・調査を行い、各々が取り組んでいる課題研究に役立てる。
*引用参考文献
「奄美大島について」https://www.city.amami.lg.jp/pjsenryaku/ui-turn/slowlife/amami.html
③事後研修
日程:令和6年9月24日
場所:横浜サイエンスフロンティア高校 生物実験室1
講師:本校教員
内容:「サンゴマップ作成」「観察できた動植物のまとめ」「GISによる写真データの管理」
④ 9月10日(火) らんかん公園、くれないの塔での調査
宿泊地に到着後、らんかん公園に訪問し、奄美大島の山野にある動植物を調査した。奄美大島特有の動植物はもちろん、関東圏で生息する動植物もおり、環境の違いによる生物の多様性について知った。
らんかん公園に生息する植物の調査・アリの調査 くれないの塔で歴史学習
⑤ 9月11日(水) 金作原での調査、国際島嶼教育研究センター奄美分室で研究者による講義、鹿児島県立大島高等学校との交流
奄美群島国立公園である金作原に訪問し、奄美大島でしか見ることができない固有種をいくつも観察することができた。また、関東圏で生息している同種の生物が金作原の環境であると巨大化し、関東圏では見ることができない生物の新たな様子を観察することができ、生徒たちは非常に感動していた。国際島嶼教育研究センター奄美分室では、コウモリの研究をされている牧様による講義を受けた。世界遺産で研究する上での注意点やコウモリの特性を知ることができた。鹿児島県立大島高等学校では、現地の高校生と課題研究を通して交流をした。具体的には、本校の生徒は研究ポスター発表、大島高校の生徒はスライド研究発表を行い、お互いの研究に関して議論を交わした。また、生物部と化学部にも訪問させていただいた。生物部では「剥製作り」「バードストライクについて」、化学部では「コーヒーの湯気について」の研究をご紹介していただき、島の課題や身近にある不思議な現象について新たな知見を得ることができた。
金作原で観察できた動植物(真ん中:ヒカゲヘゴ 右:オットンガエル) 国際島嶼教育研究センター奄美分室で行われた講義
大島高校との課題研究発表交流:大島高校生物部(左)と化学部(右)との交流
⑥ 9月12日(木) モダマの自生地、住用川マングローブ林、加計呂麻島での調査
モダマの自生地に訪問し、世界最大のマメ科植物のモダマの実態を調査した。豆のさやの大きさに驚き、クルクルと巻いて伸びていたツルの形状には感動をしていた。住用川マングローブ林では、カヌーを使用してオヒルギ、メヒルギを目の前で観察することができた。事前課題で学習して得た知識と、実際のマングローブの様子を比較しながら観察をしていた。加計呂麻島では、シュノーケルを行って珊瑚や魚の生態を調査した。事前学習でサンゴや海の生物を写真で確認していたが、本物のサンゴや魚の姿を観察でき非常に感動していた。同時に、現在の課題であるサンゴの白化の広がりについても実感することができた。
モダマ自生地によるモダマの観察 住用川マングローブ林 加計呂麻島で見られたサンゴの白化現象
⑦ 9月13日(金) 和瀬港、奄美自然観察の森での調査
帰りの飛行機まで和瀬港と奄美自然観察の森で海と山の動植物の調査を行った。和瀬港では、クラゲを観察するために訪問したが、クラゲを発見することはできなかった。しかし、ウミヘビなどの海洋生物を見ることができた。奄美自然観察の森では、アマミシリケンイモリやフジノカンアオイなど奄美特有の動植物を観察することができた。本研修に参加した生徒の中にカンアオイについて研究している生徒がおり、研究対象としていた植物を観察することができて感動していた。
和瀬漁港の海洋生物観察 奄美自然観察の森・森にいた2種類のカンアオイ
5.研修のまとめ
本研修では、亜熱帯性気候の奄美大島でしか観察することのできない植物や動物の生態調査を行うことができた。特に、関東と同じ動植物であっても、周辺環境や気候等の変化によって成長度合いや姿が異なっていたことを観察できたことはとても貴重な体験となった、また、横浜だけでは観察することが難しい植物や動物の生態を知ることが出来たのは、これから研究を行う生徒にとって重要な知見となると思われる。現在課題となっているサンゴの白化についても、実態を確認できたことで環境問題に対する課題意識を持つきっかけとなった。大島高校との交流では、自分たちの研究に関しての議論から新たな示唆を得られたり、島の高校生が行っている課題研究から島ならではの課題を感じたりすることができた。また、生物部や化学部の生徒とも交流できたことで、奄美大島の動物に関する課題や身近に起きている不思議な現象などに関する新たな知見を得ることができた。これからは調査結果について校内での報告や発表などを行い、参加が出来なかった生徒へ研修で得られた知識を還元していく。また校内発表にとどまらず、学会の高校生発表等にも報告できるよう準備を進めていく予定である。
サンモールインターナショナル Science Project Day (10/9)
Saint Maur International School(横浜市中区山手町)は、1872年創立のアジアで最も歴史のあるインターナショナルスクールで、本校は毎年様々な行事で連携活動を行っています。10月19日(金)に行われたScience Project Dayは、同校がIB(国際バカロレア)プログラムに基づいて、毎年実施しているプログラムです。生徒たちはグループに分かれ、それぞれが設定したリサーチテーマについての実験を行ったり、データを集めたりすることに1日を費やします。
今年のテーマはHeat「熱」でした。本校からは校内選考で選ばれた1年次生6名がサンモールインターナショナルスクールを訪れ、一人ずつ別々のグループの一員として、1日協力して活動に取り組みました。各グループのテーマは「不純物によって沸点はどのように変化するのか」「温度と酸のpHとの関係」「様々な水溶性物質が水溶液の蒸発率に及ぼす影響」などで、生徒たちは緊張の中、英語でコミュニケーションをとりながら、それぞれのプロジェクトの完了を目指し、全力で活動に協力するとともに、サンモールの生徒たちと交流を深めていました。